3 殺人の手段と結果

3.14 餓死

 体重70kgの成人男性がただ横になっているだけでも、一日1650カロリーが必要だと言われている。一日中肉体労働をすれば、6000~7000カロリー必要となる。
 エネルギー源としてまず炭水化物が消費される。炭水化物が枯渇し24時間が経過すると、脂肪、次いでタンパク質、血液中のグルコースが消費され始める。この際、生成されたケトンが血液や尿に混ざり、甘酸っぱい臭いを発する。
 断食を行うと、28~35日後に平均18%体重が減少する。同時に、筋力の低下、意識喪失、注意力や集中力の低下が見られるようになる。40日後、ビタミンやアミン不足が原因で日常生活に必要なコミュニケーションが取れなくなるウェルニッケ・コルサコフ症候群を発症する者や、死亡者が出始める。57~73日後に全員が死亡する。
 40%の体重の減少が致死的とされる。一説では、水すら摂取しなければ1~2週間、水だけ摂取すれば30~40日で餓死するとされる。また、20代の健康的な肉体の男性であれば、水だけで生存できる期間は60日前後で、体脂肪の70~94%、タンパク質の19~21%を消費した時点で死亡するとされる。
 人は飢餓状態になると、猛烈な空腹感と飢餓痛を覚える。その後、食べたいという欲求が失せ、無気力、衰弱、体重の減少が加速する。