3 殺人の手段と結果

3.12 虐待死

 乳幼児の虐待死について、3歳以下が最も多い。新生児は分娩直後から2~6週間までの乳児を指し、えい児は3歳までの子供を指す。加害者は母親が多く、手段は、素手で殴る、蹴る、鼻口を塞ぐ、もので叩く、殴る、の順に多い。1、2歳では外傷は頭や首に多く、頭部ならクモ膜下出血や硬膜下出血を引き起こす。2歳を過ぎると外傷は腹部に多くなり、肝臓や脾臓、腸間膜やすい臓の破裂を引き起こす。
 新生児の遺棄では、出産時に生きていたか死んでいたかによって罪の重さが違う。判定方法として「呼吸をすれば肺に空気が溜まるはずなので、肺が水に浮くか確かめる」というものが知られるが、腐敗や呼吸の程度により単純にいかない。新生児は乾燥が早く体内細菌がいないため、腐敗がしにくく、新聞紙にくるんでおくだけでミイラ化しやすい。ビニール袋で密封された遺体が、実際には1年以上経過していたにもかかわらず死後数週間と判定されたケースもある。また、虐待か事故かによって罪の重さが違うが、これは折檻の跡や、殴られた際に生じる頬の裏側や歯茎の傷などによって判断する。
 1歳未満の乳児が突然死亡し、死因が明確ではない場合、乳幼児突然死症候群(SIDS)と判別される。乳児を窒息させる虐待死は外傷が残りにくいため、SIDSとの判別が困難な場合がある。