3 殺人の手段と結果
3.8 銃殺
日本では、他殺の場合は拳銃と散弾銃が、自殺の場合は散弾銃が多く使われる。散弾銃は許可が得られれば所持が可能であるためである。
拳銃弾とライフル弾は、主にフルメタルジャケット弾とハローポイント弾に分類できる。フルメタルジャケット弾は、銃弾と同じ径の孔を残して人体を貫通する。ハローポイント弾は、体内で止まり、径の大きな空洞を形成する。後者の方が人体へのダメージが大きい。また、拳銃よりもライフルの方が弾速が速く、フルメタルジャケット弾であろうと銃弾自体が分離して、体内で空洞を形成しやすい。運動エネルギーは質量と速度の二乗の積で表されるため、ダメージは速度が支配的である。
銃口からは銃弾だけでなく、炎、発射ガス、金属片、鉛、燃焼しきらなかった火薬などが飛び出しているため、銃口と人体の距離が近い接射ならこれらが埋め込まれ、銃口の輪郭が皮膚に残る。準接射なら火薬が皮膚に入り込み、遠射なら銃弾のみが孔を作る。
頭部が銃撃を受けると、射入口で頭蓋骨内側の骨が脳に向かって飛散し、第二銃弾となって脳を傷つける。射入口の頭蓋骨が貫通していなくても、衝撃によって第二銃弾は発生する。胸部や腹部でも、肋骨などに当たり跳ね返ったり、第二銃弾が発生することで被害を受ける。胃や肝臓、腹部大動脈を始めとする動脈が傷つくと、失血が深刻である。胸膜内に空気や血が溜まる現象や、心タンポナーデも複合的に発生する。大腸に当たると糞便による感染症が懸念される。銃弾が脳に当たっても脳幹を破壊しない限り即死ではなく、心臓に当たっても即死するわけではなく、半数は生存していると言われている。四肢が銃撃を受けると、腕は止血が可能だが、脚の大腿動脈が傷ついた場合は止血が困難である。
散弾銃の散弾が近距離で当たると、粒状の散弾が分散して、体内に軌跡の短い大きな空洞を形成する。距離が離れるほどバラバラに散り、致命傷にはなりにくくなる。