3 殺人の手段と結果
3.3 毒殺
3.3.1 青酸カリ
3.3.2 ヒ素、セレン
3.3.3 筋弛緩剤
3.3.4 農薬
3.3.4.1 有機リン系殺虫剤
3.3.4.2 パラコート除草剤、ダイコート除草剤
3.3.4.3 カーバメート剤
3.3.5 医薬品、大衆薬
3.3.5.1 バルビツール酸誘導体
3.3.5.2 ベンゾジアゼピン誘導体
3.3.5.3 ブロムワレリル尿素
3.3.5.4 エフェドリン
3.3.5.5 ジフェンヒドラミン
3.3.5.6 スコポラミン
3.3.5.7 アセトアミノフェン
3.3.5.8 カフェイン
3.3.5.9 アセチルサリチル酸
3.3.6 ドラッグ
3.3.6.1 覚せい剤
3.3.6.2 アヘン、モルヒネ、ヘロイン
3.3.7 ニコチン
3.3.8 有機溶媒
3.3.9 動物毒
3.3.9.1 フグ毒
3.3.9.2 毒貝
3.3.9.3 毒クラゲ
3.3.9.4 毒ヘビ
3.3.9.5 毒カエル
3.3.10 毒草
植物毒は、どこに働くかで分類すると6つに分類できる。
- 刺激毒
- 麻酔毒
- 刺激麻酔毒
- 心臓毒
- 血液毒
- 痙攣毒
また、毒の成分で8つに分類できる。
- アルカロイド
- 配糖体
- サポニン
- 苦味質
- 樹脂
- 油脂
- 植物性毒素
- シュウ酸
3.3.10.1 トリカブト
アコニチンはシナプスのナトリウムチャネルに結合し、ナトリウムが流入しやすくして、ナトリウムチャネルを常に活性化させる。摂取すると、10~20分で口唇や四肢の痺れ、悪心、嘔吐、下痢、めまいを起こし、激しい唾液分泌や意識消失、全身痙攣、呼吸麻痺などを経て、2時間後に循環不全や呼吸不全で死亡する。有効な解毒剤はない。アコニチンの致死量は3~4mgで、塊根の推定最小致死量は1g。
3.3.10.2 ジキタリス
ジキタリスの成分であるジキトキシン、ギトキシンは胃腸から急速に吸収され、尿で排出されるまでに20日以上かかるため、体に蓄積されやすい。多量に摂取すると、悪心、頭痛、嘔吐、下痢などを起こし、視覚障害、錯乱、不整脈、中枢神経麻痺、心室細動などを起こして死に至る。葉に多く含まれ、致死量は体重1kgに対して5mgと言われている。配糖体によって青汁よりも苦みが強く、誤って食べても多くは吐き出されているとされる。
3.3.10.3 ドクニンジン
ドクニンジンの毒は、意識がはっきりしたまま肉体だけが硬直する。毒の成分は、コニイン、ガンマコニセインであり、悪心、嘔吐、口の渇き、めまい、骨格筋の麻痺、痙攣、体温低下、聴覚障害、瞳孔拡大などを引き起こす。そして、手足の末端から痺れ始め、筋肉が硬直する。やがて、横隔膜の筋肉が麻痺し、呼吸困難によって窒息により死に至る。毒性は天候に大きく左右され、夏の晴れた蒸し暑い日は、曇りの日よりも2倍の毒性を持つ。また、乾燥させたり搾った汁は、時間が経過するにつれて毒性が低下する。コニインの致死量は500mgと言われ、コップ1杯の搾り汁程度に相当する。
3.3.10.4 ヒガンバナ
3.3.10.5 アオツヅラフジ
3.3.10.6 イヌサフラン
イヌサフランの毒の成分はコルヒチンであり、主に球根に含まれる。致死量は1~6mgであり、球根10gに相当する。コルヒチンは刺激性、細胞分裂防止性を持ち、コレラに似た症状が現れ心臓血管性虚脱で36時間以内に死亡する。細胞分裂の阻害場所によって様々な中毒症状を呈し、消化器官なら下痢、嘔吐、腹痛を引き起こし、肝障害による循環器不全によって死亡する。脊髄細胞なら白血球や血小板が減少し、鼻血や歯肉からの出血、血尿を引き起こし、出血によって死に至るケースがある。呼吸不全で死亡するケースもある。コルヒチンの反応が出るまでに12~48時間かかるため、気づいたときには手遅れになっているケースが多くある。
3.3.10.7 キケマン
3.3.10.8 シキミ
3.3.10.9 クロバナロウバイ
3.3.10.10 ストロファンツス
3.3.10.11 キョウチクトウ
3.3.10.12 ドクウツギ
3.3.10.13 オモト
3.3.10.14 ゲルセミウム・エレガンス
3.3.10.15 ドクゼリ
ドクゼリの毒の成分は、シクトキシンであり、植物全体に含まれるが、特に地下茎や根の毒性が高い。中枢神経の延髄や中脳を刺激する神経毒である。季節によって毒の量に違いがあり、早春と晩秋に毒性が強くなる。口にすると、1時間半~2時間後にひどい灼熱感、嘔吐、めまい、腹痛、痙攣、瞳孔散大などを引き起こし、強直性全身痙攣や心臓停止で死に至る。シクトキシンの致死量は50mg、ドクゼリの量で6gに相当すると言われている。根茎を2個誤食し、1時間以上痙攣を起こし、心臓が停止して死亡したケースや、根で作った汁を皮膚に塗って死亡したケースがある。若葉をセリと間違えたり、根茎をワサビと間違えて誤食することが多い。
3.3.10.16 オキナグサ
3.3.10.17 ヨウシュヤマゴボウ
ヨウシュヤマゴボウの毒の成分は、硝酸カリ、キンナンコトキシンであり、植物全体に含まれるが、特に根と熟した実に多く含まれる。口にすると、じんましん、嘔吐、下痢などを引き起こし、重症になると脈拍が弱くなり、血圧が低下し、心臓麻痺を起こして死に至る。毒性は低く、健康な若者であれば大量に摂取しない限り死亡することはない。また、実を口に入れると、口の中が焼けつくような感じになるため、誤食の可能性は低い。ただし、5歳の子供が実でジュースを作って飲んだところ、30分もしないうちに激しい腹痛、嘔吐、下痢に見舞われ、全身に冷たい汗をかき、呼吸が荒くなり、脈が遅くなり、痙攣を繰り返して死亡したケースがある。