5 殺人と法律

5.3 心理検査

 ここで言う心理検査は、雑誌やテレビで扱う通俗的なものではなく、統計的に信頼性や妥当性のあるものである。被験者がこなした課題を集計して解釈方法に照らし合わせることで、乳児の発達や、発達障害、知能、人格、心の健康、各精神障害の程度等を判断する。精神障害の治療や精神鑑定で用いられることがあるが、解釈方法をあらかじめ知っておくことで、意図する精神状態の結果を作り出すことができる。当然ながら精神科医は心理検査の結果だけで診断を下さないので、詐病の項で述べたように意図する精神状態を深く理解し、診察の結果と一致させる必要がある。
 心理検査実施においては、検査を組み合わせるテスト・バッテリーと呼ばれる方法が広く用いられており、知能検査と投影法を組み合わせることが多い。大学の教育では、知能検査としてWISC(児童用)とWAIS(成人用)、投影法としてロールシャッハ法が多く用いられているため、特に若手の臨床心理士はこれらを用いる可能性が高い。家庭裁判所調査官による調査では、時間的制約があるため、文章完成法(SCT)、バウムテスト、S-HTPがよく使用されている。

5.3.1 ロールシャッハ法

 ロールシャッハ法は投影法の一つであり、本来は後述する投影法の項目で説明するのが望ましいが、精神鑑定事案の27例中96%に採用されており、精神鑑定との結びつきが強いことから重点的に解説する。
 ロールシャッハ法はRIMとも呼ばれる。検査対象の自我機能の働き具合、世界の体験の仕方、コミュニケーションの特徴を知ることを目的とする。インクの染みという検査対象と検査者間で共通の現実を通して、検査対象を理解していく参与観察的手法。信憑性については長らく議論されている。所要時間は、50分。
 いくつかの流派があるが、名大法で説明する。検査者と検査対象は向き合わないように着座する。「今からいろいろな図版を見せます。それが何に見えるか言ってください。何に見えても構いませんし図版はどんな風に見ても良いのです。そしてもう他に見えなくなったら返してください」のような説明を受け、左右対称のインクの染みが描かれた、有彩色5枚と無彩色5枚から構成される10枚の図版が1枚ずつ手渡される。図版を回転させても良いのだが、たとえ質問しても明確な回答は検査者から無い。検査対象が説明を理解していない場合や、1枚の図版に対して1個しか回答しないような場合は、再度説明したり、「他に何かありませんか」と励ましが行われる。回答が1枚の図版に対して10個以上出た場合や、10分以上かかる場合は打ち切られる。回答中、言葉の言い回しや仕草、時間、図版の回転方向が記録されている。10枚が終わったら、「さあ、これで一通り終わりました。この図版が今いろいろなものに見えたわけですが、どうしてそう見えたのか、この図版のどこが、どんな点からそう見えたのか、ということについて説明していただきたいのです。それでは、もう一度カードを初めから見てもらいます」と説明を受け、各図版に対して反応領域(どこでそれが見えたか)、決定因(どんな点からそう思ったか)、反応内容(何に見えたか)を答え、最後に好きな図版や嫌いな図版、父親を連想する図版や母親を連想する図版を答える。感想を求められる場合もある。分析では、得られた反応をスコア化する。解釈は、形式分析(スコアを統計的な一般基準と比較し解釈する)と継列分析(図版内での反応の動きと、全図版を通した反応の動きを読み解き、背景にあるものを捉える)から行う。継列分析はアートにも例えられる。

 図版の一覧は下表の通り。番号列の1番目の図は実際の図版であり、2番目の図は阪大法のスコアリングで使用する図でDが大部分反応、dが小部分反応の番地を示す。

番号 平凡反応
(各流派の和集合)
備考
ロールシャッハ
ロールシャッハ
蝶、コウモリ 無彩色。不安と当惑を示しやすい。
ロールシャッハ
ロールシャッハ
人間、四足獣 黒と赤の2色。初の2色登場により、色彩ショック、形態水準の低下が見られやすい。嫌いなカードに選ばれる率が高い。
ロールシャッハ
ロールシャッハ
人間、リボン 黒と赤の2色。色彩ショックから立ち直れたか反応を見る。
ロールシャッハ
ロールシャッハ
毛皮類、コウモリ、動物の頭、人間、類人間 無彩色。陰影ショックが見られやすい。父親カード。
ロールシャッハ
ロールシャッハ
コウモリ、蝶 無彩色。最も反応が出やすい。
ロールシャッハ
ロールシャッハ
毛皮類 無彩色。陰影反応、性ショックも見られやすい。
ロールシャッハ
ロールシャッハ
人間、魚、四足獣 無彩色。母親カード。好きなカードに選ばれる率が高い。
ロールシャッハ
ロールシャッハ
四足獣、花 多彩色。初の多彩色登場により、色彩ショックが見られやすい。
ロールシャッハ
ロールシャッハ
多彩色。嫌いなカードに選ばれる率が高い。
ロールシャッハ
ロールシャッハ
クモ、カニ 多彩色。部分反応が多く、反応が分散されやすい。
1番目の画像はRorschach test - Wikipediaより引用

2番目の画像は「改訂版 ロールシャッハ・スコアリング 阪大法マニュアル」より引用

 スコアには、反応領域(どこに見たのか。図版全体に反応したのか、区別しやすい部分に反応したのか、空白に反応したのか、など)、決定因(何を手掛かりに見たのか。形のみに基づくのか、人間の運動や状態に基づくのか、動物の運動や状態に基づくのか、色彩の要素に基づくのか、濃淡の要素に基づくのか、など)、反応内容(何を見たのか。人間、非現実的な人間(鬼など)、人間の部位、動物、血液、食物、芸術、など)、形態水準(見たものの現実的な適切さ)、平凡反応(一般的によく見られる反応)などがある。例えば図版Ⅰにおいて、蝶やコウモリと回答すれば平凡反応がカウントされ、白い部分も用いて動物の顔と回答すれば図版全体と空白に反応したとカウントされる。
 スコアから心理学的な意味付けが行われる。例えば、図版全体の反応が多ければ、論理的、抽象的、総合的な知的能力や思考形式、目標達成の欲求を持つとされる。空白の反応が多ければ、反抗的傾向を示唆するとされる。これらの意味付けは”ロールシャッハ法解説 名古屋大学式技法”が詳しく、スコアリングの方法等もよくまとまっている。
 阪大法では統合失調症に特有の反応として、「翼状全体反応」が挙げられている。ⅠやⅤの図版において、図版全体に反応し、中央が体で両側が翼であることから、「コウモリ」「蝶」「蛾」「鳥」などと答える。一方で、他の図版では図版全体にまったく反応できないことがある。統合失調症患者の94%でこの反応が見られる。
 続いて、正常な精神状態の判定事例と、典型的な統合失調症の判定事例を紹介する。記述は専門記号を排して、非専門家への分かりやすさを優先している。
5.3.1.1 正常な精神状態の判定事例

 名大法のスコアリングだったため、次の事例と揃えるために(だいたい)阪大法に変換している。

図版 時間、カード方向 反応 質疑

初発反応時間:1秒
反応終了時間:2分32秒
22秒
0度
第一印象は、あのー、犬の顔です。はい、まず。で、そうですね、あと……

目と、こっち垂れ下がっている耳(DⅡ)と、顔の輪郭(DⅢの外側)もこのあたり捉えて。ここが口ですね、はい。

反応領域:図版全体と空白(メインの反応に付随)を用いた反応
決定因・形態水準:動物の運動や状態に関する反応。形態水準は高い。
反応内容:動物の部位
33秒
180度
ひっくり返した時に、こう、ちょっとタワーのような、にも見えましたし、

こっち(DⅣ上部)が上なんですけど、形的にこう、三角錐のような形になっているところからのイメージで、あの東京タワーじゃないですけど、こうメインが支柱になっていて(DⅠ)みたいな。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:建築物
人が立っている、大きく足を広げているようにも、ちょっと今一瞬見えましたが、そんなようにも見えるぐらいですね、はい。

ここが頭(DⅣ中央部)になりまして、胴体で、足ですね(DⅤ付近)、で手がこういう感じになっているのかなって(腕を曲げ両手を頭に当てる)。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:人間の運動や状態に関する反応。形態水準は低い。
反応内容:人間
57秒
0度
あとは、うんと……。この向きでいくとやっぱり、鳥のような、コウモリのような、そういう風にも見えますし。うーんと、例えば……。えーっと、いやでもなんだろうな。

ここが翼になって(DⅢ)、ここが頭部になって(DⅤ)、全体像として、1匹というか、こっちが尾ですね(DⅣ下部)。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:色彩の要素を用いた反応。形態水準は高い。
反応内容:動物、平凡反応
1分58秒
270度
うーん。縦にしたときに、具体的なものではないんですけど、ちょっとこう、豚のようなイノシシのような動物が見える反面、下側は影のような感じにして捉えるようなこともできるのかなと。それぐらいかな。こんなような感じで良いですか?はい。

ここ豚の鼻です(d4)。で耳が立ってます(d2)。で体があって(DⅢ)、前脚、後ろ脚って感じで。こっちはその影が映っているというような。

反応領域:図版全体を用い、2個以上の概念を有する反応
決定因・形態水準:立体的な知覚が見られる反応。形態水準は高い。
反応内容:動物、その他

初発反応時間:1秒
反応終了時間:2分50秒
41秒
0度
ああ、うーん。まずは……。うーん。まずパッと見た感じは人が2人、中腰のような形で、手を合わせているという風に、まずは見えました。

頭部(DⅢ)、 ここが手のひら(d1)で腕ですね。ここ(DⅡ)が胴体になって、膝を突き出している、座っている。左右対称で2人座っている。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用い、2個以上の概念を有する反応
決定因・形態水準:人間の運動や状態に関する反応。形態水準は高い。
反応内容:人間、平凡反応
1分33秒
0度
あと……うーん。すごく断片的というか、まぁあの個人的に、この赤いところが足首より下。なので、ここが下半身。足がちょっと気持ち悪いですけど、ここが部分的にはちょっと足、という風にも見ることができるのかなとか。あと……そんな感じかな。

えっと僕がちょうどこういうくるぶしが赤色の陸上用のソックスを持ってまして。だから、ここはソックス(DⅢ)です。足です(DⅡ)。であの、黒いズボンです。<気持ち悪い?>うーん、やっぱり色が、表現するときにまぁやっぱりこのあたりとかの(DⅣ)説明がしづらいなと。自分はまぁこう見えるけれど、自分が見たものに対しては説明がやっぱりしにくいなとか。赤が入っちゃているんで、気持ちはよくないなぁという感じです。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:色彩の要素や濃淡の要素を用いた反応。形態水準は低い。
反応内容:人間の部位、衣服

初発反応時間:3秒
反応終了時間:2分50秒
9秒
0度
うーん……やっぱり僕は人を連想してしまうんですが、周りの色とかはすごくまぁ、気になってしまうので、これ(D2+2)は何かというとそれは言えないんですけど、パッと見た感じここが向かい合っている人にも見えますし、

頭部で(d1)、ここ(DⅥ)が胴、胸部、手で、こう何か物を、重たそうなものを持って(DⅧ)、これ脚(DⅣ)ですね。人が2人並んでっていう風に見えました。<重たそうなもの?>んー、それは何と言われるとまぁトレーニングしているような、ウェイトかなっていう。重たいものをこう、背筋を鍛えるための。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用い、2個以上の概念を有する反応
決定因・形態水準:人間の運動や状態に関する反応。
反応内容:人間、道具、平凡反応
180度 ひっくり返しても何かを踊っているというかダンスをしているような。顔で腕でお腹で、上半身だけなんですけど。

ここが顔(DⅧ)になって、ここが腕(DⅣ)、で上半身(DⅥ)。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用い、2個以上の概念を有する反応
決定因・形態水準:人間の運動や状態に関する反応。形態水準は高い。
反応内容:人間、娯楽
1分6秒
180度
そうですね、あと……昆虫チックな、ヤゴのような、にも見えますし。何だろうな……

ここが顔ですね(DⅤ)、で目ですね(DⅧ)、で前脚です(DⅣ)、でこう胴体があるっていう。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用い、2個以上の概念を1個の反応に統合した反応
決定因・形態水準:動物の運動や状態に関する反応。形態水準は高い。
反応内容:動物

初発反応時間:1秒
反応終了時間:1分47秒
27秒
0度
うーん。うーん?第一印象は、ちょっとこう、竜がこっち側を。頭がこの向きですと下にあって、っていうような風にも見えますし。

ここが頭部ですね(DⅠ)、目になって、鼻から口にかけたところ、やや短いひげです。で、体に繋がっていくところ(DⅤ上部)。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:動物の運動や状態に関する反応。形態水準は高い。
反応内容:非現実的な動物
40秒
0度
どっちかっていうとちょっと気持ち悪い、なんか怪物のような、人型の、そんな風にも。

ここが頭になって(d1)、ずっしんとここが足ですね(DⅣ)<気持ち悪い?>まぁ人ととらえるなら腕(d2)がすごく短かったり、頭がちっちゃかったり、ここ(DⅠ)がいわゆる股間的な要素になったり、極端に足が大きいっていうアンバランスさから。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:非現実的な人間
1分20秒
180度
うーん、あとはあれかな……。この向きだと、犬の顔、まぁ耳の垂れた犬の顔ですね。

目になります(DⅠ中央部左右の空白)。正面の顔で、鼻筋になって(DⅤ)、ここ(d1)がヒゲになって、ここ(DⅢ)が耳になってという。

反応領域:図版全体と空白(メインの反応に付随)を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:動物の部位

初発反応時間:11秒
反応終了時間:2分15秒
11秒
0度
パッと見はちょっとこう、チョウチョのような感じに。そうですね……。うーん。

翼で(DⅠ)頭があって(d1)っていう漠然とした形からチョウみたいな感じです。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:動物、平凡反応
38秒
0度
人が、こう作った翼を広げて立っている風にもちょっと見えますし。うーんと……。

ここが頭(d1)、ここがちょっと何となく目と鼻っていうようにも見えたので(d1下部)。あと脚の形として(d3)見えたので、人をここにイメージして。大きな翼(DⅠ)を、作った翼を広げている。

反応領域:図版全体を用い、2個以上の概念を有する反応
決定因・形態水準:人間の運動や状態に関する反応。形態水準は高い。
反応内容:人間、その他
1分36秒
180度
あとなんだろうなぁ。なんかこう、ハサミだけが発達したエビのようにも見えます。

ここが(DⅠ)、一番前腕というかハサミになってるんですけど、ここだけが異常に発達している。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:動物

初発反応時間:10秒
反応終了時間:2分44秒
22秒
0度
まず思いついたのが、左右対称になってはいるんですが、天狗の顔のような感じと。

(0度の向きでも180度の向きでも)どっちでもありかなって思っちゃったんですけど。こっちだと、ここを鼻(d1)として、アゴ(DⅤ下部)ですね、口と。天狗の顔、お面というか、ここが飾りに(DⅠ)。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:仮面、非現実的な人間の部位
180度

天狗に関してはこうひっくり返してもありかなっていう。ここが(d1)当然鼻になって、ここ(d2)あごひげになってくるのかなっていう。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:仮面、非現実的な人間の部位
40秒
0度
まぁちょっとこう、ギターのような楽器、のようにも見えましたし。

全体像です。全体像でこっちがトップになって(DⅠ)、多分こう、弦がこういう風に張られていて(DⅥ)、このおしゃれな形(DⅡ輪郭)っていうような、はい。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:音楽
1分
0度
うーん。そうですね。こういう気持ちの悪い、なんか生物がいるんじゃないのかなみたいな、そんな風にも感じましたし。

こっちが頭になって(d3)。でこう脚がゆるゆるゆるっとあって(DⅢ)、異様にちょっと大きい体(DⅡ)があって。<気持ち悪い?>どうしても、アンバランスさからくるのかなって。これを虫としてとらえるなら、ここから後ろが極端に大きくなっていくところとか、不要なものかなと。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:動物
1分26秒
180度
うーんと……。やや強引に、えーと、子供の遊ぶ、あのジャンピング、あの何だけっけな、子供が足を、両足を載せて動く、ぴょーんぴょーんってやるあのおもちゃにちょっと見えたりとか。

これ(d1)手を握るところで、足をかけるところ(DⅢ)。ジャンピングホッパーじゃなくて、そんなような名前……。<ホッピング?>あ、ホッピング。そうですね。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:玩具

初発反応時間:14秒
反応終了時間:2分59秒
18秒
0度
これ難しいな。でもまぁ、そうですね、まずはこう、お下げをしている女の子の髪の毛が、ちょっと上に上がっている、女の子が向かい合っているという風にまずパッと見えました。

ここ(d2)がお下げですね。で頭(DⅢ)で、頭の出ているところで(DⅢ中央付近の出っ張り)、口になってあごになって(DⅢ下部の出っ張り)っていう顔に見えたので。そういう女の子が対称的に向かい合っている。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用い、2個以上の概念を有する反応
決定因・形態水準:人間の運動や状態に関する反応。形態水準は高い。
反応内容:人間
1分39秒
0度
えーっと、そして。そうですね、うーん。まぁこう絶妙なバランスで、積み重なっている岩、石という風にも。ちょっとほんと強引ですけど、そういうようにも今思いました。

これらが全部(DⅢ+DⅣ+DⅥ)、単体の岩です。それがあの、ここの石(DⅥ)の上にこいつ(DⅣ)が載ってて、こうまた石(DⅢ)が載っているので。バランスとって。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:濃淡の要素を用いた反応。無生物の動きに関する反応。形態水準は高い。
反応内容:自然

初発反応時間:2秒
反応終了時間:2分57秒
17秒
0度
はぁ、うーん。そうですね、まずは……ちょっとこう爬虫類のような生き物が登っているようにも見えます。それが、まず第一印象でしたね、はい。

これですね(DⅠ)。ここがカメレオンのような動物ですね。こっちが頭になって、前脚、後ろ脚っていうような感じで、胴体があって、それが登っている。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:動物の運動や状態に関する反応。色彩の要素を用いた反応。形態水準は低い。
反応内容:動物
1分35秒
180度
うーん……何かなぁ。反対向きにしたときに、生き物の顔のようにも見えます。うーん、なんというか、まぁちょっとこう何の動物かっていうのが、特定が自分の中であのー、しづらいんですけど。でもなんかちょっと悲しそうにしている、生き物の顔にも見えます。

正面の顔です。正面の顔で、ここが垂れ目の感じで(DⅡ内部)。で輪郭がこうあって(DⅠ)。この辺が口(DⅢ)になって、ヒゲが生えている感じになりますけど<悲しそう?>うーん、まぁなんか、ここがちょっとこう涙のように。目じりのところがちょっと白くなったので、泣いとるのかなっていう。

反応領域:図版全体と空白(メインの反応に付随)を用い、2個以上の概念を1個の反応に統合した反応
決定因・形態水準:人間の運動や状態に関する反応。形態水準は低い。
反応内容:非現実的な人間の部位

初発反応時間:41秒
反応終了時間:2分26秒
41秒
0度
まずは……えーっと、鉄仮面をちょっとこう、かぶったような姿に。頭からここ肩とか胸のところまでを、僕は今見たんですけど、そういうなんか、西洋式の兜をかぶった甲冑のような。

ここが顔(DⅡ+DⅢ)でして、でー、首、胴体(DⅥ中央部)、肩(DⅦ)ですね。そうするとここが目の位置になって、口の周り(DⅡ)をこう、その甲冑が覆う、まぁさらにこうかぶさっているっていう、前部甲冑なんですけど、そういうイメージですね。

反応領域:図版全体を用い、2個以上の概念を1個の反応に統合した反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:仮面、非現実的な人間の部位
1分3秒
180度
それをちょっとこう逆さまにすると、なんか女性が、気持ち悪い女性が笑っているようにも見えるかなとか。

大きな目、で口です。大きな口が笑っている。で髪の毛(DⅡ)として。ここ(DⅠ)はまぁ色々考えたんですけど、なんかかぶっているのか、それともつけているのか……ちょっと強引かなとか。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部と空白(メインの反応に付随)を用い、2個以上の概念を1個の反応に統合した反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:人間の部位
1分52秒
180度
えー、うーんと……。なんかこの辺りが、インコのような小動物の鳥にも見えて、こう、木陰で休んでるみたいな、そんな風にも見えますし。

これで1羽です(DⅢ)。頭から体にかけて、ここが尾ですね。でここ(d1)が足。木陰のようなところ(DⅡ)の下で2羽が仲良く休んでいるという。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部と空白(メインの反応に付随)を用い、2個以上の概念を1個の反応に統合した反応
決定因・形態水準:動物の運動や状態に関する反応。形態水準は高い。
反応内容:動物、自然

初発反応時間:2秒
反応終了時間:2分27秒
14秒
0度
うーん……何かパッと見た感じは、小さな生き物がたくさんいる絵に見えました。昆虫とか、そうですね。ちょっと小動物とか、いろんな虫がたくさんいるという、そういうちょっと、に見えました。

これがクワガタ(DⅩⅣ)に見えまして。この辺(DⅧ)も昆虫に。これは最初クモっぽさを感じて(DⅠ)。これ(DⅥ)がちょっと大きいですけど幼虫(DⅥ)にも。これが(DⅣ)なんていうんだろ、蛇じゃないですが、体の長い生き物とか。黄色いこれも(DⅤ)、小動物のように。あとこの辺(DⅩⅡ)は葉っぱみたいな。ただ若干ここ(DⅠ)に関しては、虫にもとらえたりとか、水としてまぁ青色なので、水のあるところに虫がとか、まぁなんか餌を求めてとか、そういうような。だからこの辺(DⅡ)が落ち葉であったりとか、黄色とオレンジとか、そういうようなイメージで。ここ(DⅢ)は木ですね。

反応領域:図版全体を用い、2個以上の概念を有する反応
決定因・形態水準:動物の運動や状態に関する反応。色彩の要素や濃淡の要素を用いた反応。形態水準は高い。
反応内容:動物、自然、平凡反応
1分29秒
180度
あと、うーん……何かな。あのー、でもちゃんと顔にも見えます。ひっくり返した時に、何かちょっと笑っているような、顔を表すようにも見えますし。

これはちょっと強引な感じもしたんですが、目(DⅤ)ですね。口になって(DⅨ)、なんか笑っているのかな(DⅨの輪郭)って。<目と口で……?>目と口のバランスから。これも人間ではないので、この辺(DⅣ)が模様になったりとか。

反応領域:図版に一般的ではない分割を施し、空白自体に意味を持たせた、異常な反応
決定因・形態水準:人間の運動や状態に関する反応。形態水準は高い。
反応内容:非現実的な人間の部位
 最も嫌いな図版:(Ⅳ)これが気持ちの悪い生き物に見えちゃったので。
 最も好きな図版:(Ⅷ)難しいですが。(ⅧかⅩ)こっちかな。色合いとしてカメレオンととらえるとか、こっち(Ⅷ)の方がなんとなくスッキリするっていうところから。

 自分をイメージする図版:(Ⅷ)難しいな。状況に応じて身の色を変えていくみたいなところとかカメレオンが生きるための力なので、その努力をしているところに共感して好きです。

側面 解釈
知的側面 図版特徴に基づいた明細化が可能であり、非現実的な作話も見られないこと等から、知覚の正確さを備え、基本的な現実検討力が保たれている。また形態水準の高い「形のみに基づく反応」や「人間の運動や状態に関する反応」が多い。平凡反応や反応内容の多様性も一定程度見られ、知的機能の高さが感じされる。「図版全体を用いる反応」が多いことから、達成欲求が強く、論理的・抽象的な知的能力、思考形式を備えている。一方で、達成欲求の高さから、やや無理な反応が見られたり、色彩ショックや不全不安と言った情緒的側面が影響したりすることで、知的な機敏性は時に遅延しがちになり、やや形態水準が下がることもある。
情緒的側面
形態水準の高さから、内面が情緒的に刺激されても基本的には客観的な事実・現実を踏まえることのできる自我の強さを備えている。また、体験型のスコア指標に従うと、体験型は顕在、潜在ともに内向型であり、自らの思考や欲求を基に外界に関わりやすいタイプと思われる。
一方で、色彩や濃淡に縛られず純粋に形から答えた割合は低く、内面は情緒的に動きやすいと思われる。Ⅰ・Ⅱカードで試験に関する質問をしたことから初頭緊張が強まりやすい様子があり、たまに自己を批判する表現をしたり詳細な説明を行っていたことから、不全不安の強さに伴ってやや強迫的に特徴を捉える様子も見られた。さらに、色彩ショックとしてⅡカード「下半身」において赤領域の扱いに苦労した点や、Ⅷカード「カメレオン」の説明に他の部分の色彩を用いている点等から、時に日常生活で経験する様々な情緒体験で動揺が生じ、現実に即した情緒的な意味付けがやや難しくなることがあるかもしれない。
ただし、スコア指標から、やや強めであるが情緒の外的統制は効いており、衝動的な情緒表出は見られないと考えられる。Ⅰカード「人が立っている→コウモリ」やⅨカード「気持ち悪い女性が笑っている→インコのような小動物が木陰で休んでいる」などで一旦低下した形態水準の回復が見られる点などから、現実検討力が立ち直る自我機能の強さも備えている。
対人的側面 人間に関する反応は多く、人への感受性や興味関心は高い。これは評価懸念なども含め、対人的過敏さに繋がりうるかもしれないが、「人間関係に関する反応」の形態水準は保たれており、ペア反応(対称性を利用して2つの物体を認識する反応)も多く、適切な共感性を発揮しながら人と関係を構築できる力があると思われる。さらに平凡反応を含め、反応の基礎的な概念は適切な(頻度の高い)反応が多いことから、対人認識は現実的で、周囲と同じ物の見方が可能と考えられる。
5.3.1.2 典型的な統合失調症の判定事例①
 検査対象は25歳の女性。テレビを見ていると何かが映る、耳元で囁かれる、人形に話しかける、急に壁を蹴るなどの言動あり。娘と二人暮らしをしていたが、娘を保育園に通わせなくなったことから、両親と警察が強制的に訪問した。言動は英語のような言葉を話すなど支離滅裂であり、同日医療保護入院している。

 目がくぼんでいて、ぎょろっとしている。くまも目立つ。げっぷや欠伸をためらわない。また、一見すると疎通は取れているように感じられるが、奇妙な言葉遣いが目立つ(性格について尋ねると、「一言でいうならボンジュール」「好奇心旺盛なうえに社交的という意味です」と答える等)。

図版 時間、カード方向 反応 質疑

初発反応時間:1秒
反応終了時間:35秒
1秒
0度
コウモリ

<コウモリ、ドラキュラというのは一緒?別?>なんとなく別かもしれない。<コウモリについて?>この羽に見えた形と目の可愛さと、カラーで。<羽は?>上の尖った部分、2層ある。尖った部分と(D3上)、ここから2層(D3下)。<2層というのは?>チョウのように、2枚羽で見えた部分。<目は?>このパーマンみたいなところ(d5)、かわいく見えたので、コウモリに適していた。<カラー?>ダーク、灰色って英語でなんて言うんでしたっけ?<グレイ?>ダークグレイですかね。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形と、白黒のみの色彩の要素を用いた反応。形態水準は高い。
反応内容:動物、平凡反応、断定口調
2秒
0度
ドラキュラ

コウモリという概念がありまして、本能的に出たのと、この白いのがキバに見えたので。<キバは?>この上の白い部分(上S)。<キバ以外のところは?>コウモリと言ったので、概念的に本能でそう見えるかなと思いまして。

反応領域:図版全体を用いているが、図版の一部だけ明瞭に用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:非現実的な人間の部位、断定口調
10秒
0度
落ち葉

カエデの落ち葉の形に見えて、何かなつかしさがあって、落ち葉と言ったと思います。<どこがどう?>この形。<もし他にも?>あのペインティング、カラーの風合いで。トールペイント。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:植物、断定口調
20秒
0度
リュウ、タツノコ、タツノオトシゴ

見え方は一緒、トールペインティング、形、ペイル。<ペイル?>輪郭というか。<どこがどう?>特に。ここが口の先端だとすると(d2先端)、ここお腹に見えて(d1当たりの輪郭)、ですね。<何匹?>2匹。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:動物、断定口調
25秒
0度
カエル

なんか、あぁ……顔がカエルさんに見えて(D5)、体カエルさんやなぁと思って(D4)。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:動物、断定口調
26秒
0度

鬼は、するどい目と(上S)、角があって、鬼かなーと思った。<カエルと鬼は別?>えぇ、別です。<角は?>ここか(d3)、ここ(d4)。

反応領域:図版全体と囲まれた空白部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:非現実的な動物の部位、断定口調
30秒
0度
それくらい。ウーパールーパー。

ここだけです(d3)。<それはウーパールーパーの?>角というか、突起ありますよね?耳代わりの、それだけです。<他のところ?>カエルと一緒ですね、この辺(D1)。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:動物、断定口調

初発反応時間:1秒
反応終了時間:15秒
1秒
0度
血液

この血痕的飛び散り方と(D4突起)、あと色だけです。<色というと?>赤色、朱色から。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形を持たない対象の色彩の要素を用いた反応。形態水準は許容範囲。
反応内容:血、断定口調
2秒
0度
チョウ、バタフリー

ここだけ、ここの形だけです(D4)。<どこがどう?>えぇ(突然うつむく)。眠たい……。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:動物、断定口調
13秒
0度
ツタンカーメン

どこやっけ……あぁ、ここだけ(D2上部×2)、目、口。<どこ?>ここのひずみと口だけ(d3辺りの2か所)。<目で口?>はい。<他のところは?>ここが(D2上部やや内側)、アボリジニーっぽい、なんていうか、ツタンカーメンのカーメンの部分に見えたんです。<カーメン?>ツタンカーメンって、カッパみたいじゃないですか。そこの部分という意味なんですけど?

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:人間の部位、断定口調

初発反応時間:1秒
反応終了時間:20秒
1秒
0度
クモ

顔で(D5)、ここが手足で(D4×2)、ここで何かやるみたいな(D7辺り)。なんか掴むというところ(言い終わると同時にうなだれる)。

反応領域:図版に一般的ではない分割を施した、異常な反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:動物の部位、断定口調
2秒
0度
リボン

ここだけです、ここ(D3)。<特に?>かわいらしいので。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:衣服、平凡反応、断定口調。
10秒
0度
タツノオトシゴ

こっちだけです(左D1)。<どこがどう?>顔の部分で、曲がり腰曲がり。<右は?>は目につかなかったです。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:動物、断定口調
12秒
0度
人が手をつなぎ合わせようとしているところ

<人とクレオパトラは一緒?別?>私は別と。これが人だとすると(D2)、これ手をつなごうとしているところ(一般に手となる部分の先端にある突起)。<ここ?>はい、手。<他のところ?>女性で、お尻、顔、胴体、足。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:人間の運動か姿勢に関する反応。形態水準は一部良好だが低い。
反応内容:人間、平凡反応
15秒
0度
クレオパトラ

なんか輪郭だけです。<もう少し詳しく?>どっちもあって、この尖った部分(d1突起)、それだけです。格好も。<恰好というのは?>すぱっと、きりっと、りんとした仕草。<尖った部分はクレオパトラの?>鼻です。<他のところは?>ここお尻で、ここ足(D4)とするなら、どうしてここが尖っているんですか。(D4中央の突起)。どうしてここが尖って描かれているんですか?私の意見を言ってもいいですか?メデューサ的神話。クレオパトラが、メデューサという悪という説明を恐れて、女を描くなら、ドラムという名の膝の辺りを、下顎に見せて、その突起の部分に竜の鼻、メデューサには負けていないよというガに見えるように描くようにしたのかなって思って。<ガ?>絵画のガです。<ドラム?>なぜか勝手に出たので。あ、膝小僧って英語でドラムって言いましたよね?私よく分からないけど。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:人間、断定口調

初発反応時間:5秒
反応終了時間:20秒
5秒
0度
妖怪、巨人の男、木、ビックフット

なんかさっきと同じに。似てるけど肖像画。一言でいうとビッグフットみたいなもので、キツネが強くなろうとするがために、ツタンカーメンを見せて、顔の要素に取り入れて、このでかい足を(D3)、強いぞの象徴とした。それがなぜかひょろひょろ(d2)。それが気持ち悪さに見えて、妖怪と。あ、人間が木になった、妖怪になったみたいなやつ、メデューサのような名前の、ネバーエンディングストーリーに出てくるやつ。キツネ自身は大切を守ろうとするがための要素に取り入れられた。それで、この絵を見て、前にキツネのような妖怪がいるように描かれてる。だからこれが樹木なら、ここが根っこ(d6)だとすると、毒リンゴがなる木に見える。<木はどこがどう?>ここが根っこ(d6)だとすると、切り株で(D1)、そこから樹木。<キツネのような妖怪?>ここがインドのような形のところ(d1)。ここが目だとすると、ここがシュアリーで毛のところ(d1両側)。<シュアリー?>あ、独学だけど、4歳の娘になぜか英語の方が通じるので、それが喜びで、つい出ちゃうんです。<インドというのは?>キツネの輪郭のことです。<キツネのような妖怪と木はどうなる?>この形、木は別。木を守ろうとして、妖怪が前に立つように見えます。<巨人の男、ビッグフットはキツネのような妖怪のこと?>えぇ。一言で言うならネバーエンディングストーリー。自然を守ろうとするストーリー。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は一部良好だが低い。
反応内容:非現実的な動物、自然、平凡反応、断定口調

初発反応時間:5秒
反応終了時間:20秒
5秒
0度
コウモリ

第1回目の説明と同じ。今思ったことはポイントはここの足の部分(d3)。あとは全体的な形。<もし他にも?>それくらい。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:動物、平凡反応、断定口調
10秒
0度

耳?あぁ、ハルモニウムって形ありましたよね?小学生の時、保健室に貼ってあるポスターで見たんですけど。その形に感覚的に見えて、そういったと思います。<ハルモニウムは、耳の中にあるこういうの?>はい、そうです。

反応領域:図版全体を用いているが、輪郭を意識していない反応
決定因・形態水準:図版の一部の構造に基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:人間の部位、断定口調
15秒
0度
か弱い女性

ここで(d3)、内股。<女性の?>足ですね。<他のところ?>まったく見ていないです。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:人間、断定口調

初発反応時間:1秒
反応終了時間:20秒
1秒
0度
猫、タイガー

<猫とタイガーは一緒?別?>タイガーの祖先って猫じゃないですか?だから進化して話したと思います。最終的にはタイガー、詳しくはホワイトタイガー。ヒゲ(d6)、それだけです。<それだけ?>ヒゲでタイガーに見えて、ゆくゆくはホワイトタイガーと見えました。<他のところ?>何も関係ない、感じるもの。

反応領域:図版全体を用いているが、図版の一部だけ明瞭に用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:動物、断定口調
15秒
0度
肺、人間の

さっきはこれを見ました。ここ肺っぽいなーと、ここだけ(中央2つの白い楕円)<もし他にも?>ないです。

反応領域:図版に一般的ではない分割を施した(明瞭でない輪郭を分割)、異常な反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:非現実的な動物、断定口調

初発反応時間:1秒
反応終了時間:25秒
1秒
0度
オードリー・ヘップバーン

イギリス人の特徴、顔の輪郭してる(D3内側輪郭)、毛がきゅっとしてるところ(d2?)。この口がオードリーに見えた(D3内側輪郭)、その次はこの髪型(D3内側輪郭)、一言でセーラームーン。<?>なんかアニメ的画だから、それだけです、アニメ的なので、セーラームーン=オードリー・ヘップバーン。ここは入らない、ここまで(D3-d2)。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は一部良好であるものの低い。
反応内容:人間の部位、断定口調
15秒
0度
対角線、あの名古屋の魚、何て言いましたっけ?お城にある<しゃちほこ?>そう、しゃちほこ。

ハンメンタイ。尻尾(d2)、それだけです。<ハンメンタイというのは?>これはコントラスト!<対角線のこと?>合同なのに反比例してる。対角線で表現できる(D4とD6を対角線で結ぶ)。それでここが尻尾(d2)。反比例が故の、比例の画、なので尻尾に見えて、しゃちほこと見えた。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:非現実的な動物、断定口調

初発反応時間:1秒
反応終了時間:23秒
1秒
0度
リンゴ、バレンシアオレンジ

<リンゴとバレンシアオレンジは一緒?別?>別で、カラーでは一緒。色ですね。この色がリンゴ(D1,D8)、リンリンリンってリンとしているからリンゴ。この色は、赤の混じったオレンジなのでバレンシアオレンジと見ました(D5)。

反応領域:図版に一般的ではない分割を施した、異常な反応
決定因・形態水準:色彩の要素を用いた反応。形態水準は低い。
反応内容:食べ物、断定口調
5秒
0度
何か抑えようとしている女性または……オラウータン

きっと落石ですよね、落石を抑えようとしてる女性の力、要するにあわの力、一言でいうならあわの力、in Englishと書いといてもらえれば。<泡のあわ?>違う、あ・わ、区別という意味。だからEnglishでOKということ、単語、補足で文字と。<あ・わの力?>そうです。<女性はどこがどう?>ロングヘア(D1外側の輪郭)。<ロングヘア?>ビーナスヘア。<落石は?>ストーン(D7/2)、エジプトの石、一言でいいと思います。

反応領域:図版に一般的ではない分割を施した、異常な反応
決定因・形態水準:人間の運動か姿勢に関する反応。形態水準は低い。
反応内容:人間、自然、断定口調
20秒
0度
悪魔

not it。あ、フハイ、一言で。<フハイは腐るという意味の?>はい。<カードのどういった特徴から?>ここのネバー(D3)、そう書いといてもらえれば、ネバーで表現できると思います。<ネバネバのネバー?>英語でnever。

スコア不能

初発反応時間:1秒
反応終了時間:23秒
1秒
0度

カラーオブジュエル、それだけです。<もう少し詳しく?>力(D3)、ラ(D2)、-(D1)、オブ(中央)、ジュエル(D3→D2→D1)、並びで表現してます。

反応領域:図版全体を用いているが、輪郭を意識していない反応
決定因・形態水準:色彩の要素を用いた反応。形態水準は許容範囲だが低い。
反応内容:自然、断定口調
5秒
0度
雷のどしゃぶり

not it。

スコア不能
10秒
0度
人間の肺に近いハート

ハーツ、もつみたいなものです。<どこがどう?>ハーツ=もつと書いといてもらえればありがたいです。<もつ?>焼肉屋さんとかにあるやつです。

スコア不能
20秒
0度
火を吹いている竜

これがファイヤー(d1先端)、これが竜の口(d1根本)。<ファイヤーに見えたのは?>トップ、風合いから。<上のほうにあると言う意味?>トップ、ドイツ語で風合いという意味です。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:動物の運動や状態に関する反応。形態水準は低い。
反応内容:非現実的な動物、火、断定口調

初発反応時間:1秒
反応終了時間:15秒
1秒
0度
ピカソ

ゲルニカ、ドナリー。<ドナリー?>ゲルニカ=ドナリーと書いといてもらえればありがたいです。<ゲルニカに見えたのは?>むちゃくさ、ムショウフジュンから、ピカソ的カラーから。<ムショウフジュン?>ドナリーということです。

反応領域:図版全体を用いているが、輪郭を意識していない反応
決定因・形態水準:色彩の要素を用いた反応。形態水準は許容範囲だが低い。
反応内容:芸術、断定口調
5秒
0度
タランチュラ

この絵の形そのものです(D1)。<どこがどう?>まさにそのものです。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:動物、断定口調
10秒
0度
霊界?ん~エナジー

この汚い色(D6内)、何て言えばいいのか、クイーン、最後のボス的なカラーと。<この汚い色から霊界?>霊界とエナジーの繋がり、霊界=エナジーという意味だと思います。私が言ったのは、たぶんそうです。

スコア不能
 総反応数は29と比較的多く、いずれも0度の角度で回答している。初発反応時間は平均1.8秒と極端に短く、直ちに反応を示していることが分かる。
 反応領域は、Ⅴ「耳」のように図版との対応がないものや、Ⅵ「タイガー」の「ひげ」やⅠ「ウーパールーパー」の「角」のように細部しか対応していないもの、Ⅷ「リンゴ、バレンシアオレンジ」のように色しか対応していないものが大半を占めている。29反応のうち、Ⅱ「血液」を除く28は形体がはっきりしており、輪郭的特徴をおさえる必要があるはずだが、極端に短い初発反応時間からも分かるように、検査対象はその作業に時間をかけていない。
 断定口調が極めて多いが、このような表現は児童には多いものの成人には少ないのが通常であり、「なぞらえて見ている内界の事象を、さながら外界に現実として存在するかのように対応している」可能性を示唆する。
 決定因は、色彩優位であることがうかがわれるが、Ⅷ「リンゴ」のように領域の輪郭的特徴がまったく考慮されていない反応が多い。これは、「このような色が図版にある」と述べているにすぎず、「形も色も似ているから、〇〇に見立てた」という内的な作業が自覚的に行われていないことを示唆している。
 総じて、漠然図形を何かになぞらえて見ているか、そもそもそのようなことをなす自分というものの形成不全がうかがわれる。
 図版全体を用いていても形態水準が低いか、図版の一部だけを使用した反応が多く、知覚的退行が生じているのは明らかである。また、臨床症状として語新作が認められ、検査場面においても音連合(リンリンリンってリンとしているからリンゴ)や語性錯誤(性格について尋ねると「ボンジュール=好奇心旺盛なうえに社交的」と回答)を疑う発言が見られた。脳波、頭部CT上に器質的な異常はなく、統合失調症の可能性が最も疑われた。
5.3.1.3 典型的な統合失調症の判定事例②

 入院が長期化した統合失調症患者の判定事例。

図版 時間、カード方向 反応 質疑

初発反応時間:8秒
反応終了時間:3分27秒
8秒
0度
コウモリの絵がうつっとります。

<コウモリはどうなっていたんですか?>コウモリが、羽、広げたようになっています。<コウモリらしいところは?>暗い所に住んでいるから、洞窟。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:動物の絵、平凡反応
0度 <他には?>世界地図の図面のように見えます。

ヨーロッパ諸国の国々が地球儀の図面の上に映っている。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は許容範囲。
反応内容:地図
1分35秒
180度
<ひっくり返してもいいですよ?>観音さんの像を浮き彫りしたように。

<浮き彫り?>すっかり姿が出てるから。
※冠がd7、頭がDⅣ、胸がDⅣ上部、体がDⅤ、手がDⅢの空白の間、足がDⅢ上部。木造でできている。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は低い。
反応内容:宗教の絵
0度 インクをこぼして反故にする紙。

紙が汚れているから、捨てる紙。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は許容範囲。
反応内容:紙、断定口調

初発反応時間:15秒
反応終了時間:2分32秒
15秒
0度
内臓、あの~、人体の肋骨が、映っている、胸部の写真です。

胸、中央に骨(D1)。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は許容範囲。白黒の要素と形を用いた反応。形態水準は許容範囲。
反応内容:レントゲン、断定口調
270度 肉の塊です。

肉や魚の切り身、肉屋で売る魚(D1)。<肉の塊らしいところは?>血、ついたぁる(D4)、魚の身か、動物の肉や、と。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形と不定形の色彩の要素を用いた反応。形態水準は許容範囲。
反応内容:魚、血、断定口調
90度 生け捕りにしたけだもの。

野や山に駆ける動物を生け捕りにした(D1)。<?>血がついているから(D4,D3)。<頭は?>頭、首の無いのやと思う。<1匹?>1匹を断ち割ったところ。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形と不定形の色彩の要素を用いた反応。形態水準は高い。
反応内容:動物、血、断定口調

初発反応時間:18秒
反応終了時間:2分55秒
18秒
0度
人形芝居の人形みたいに見えます。

頭、胴、足、手で芝居をする人形(D1)

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。
反応内容:非現実的な人間、平凡反応
1分10秒
180度
魚の骨のように見えます。

エビの骨、頭(d1)、尻尾(D4)。<一匹?>一匹、影が、うつっている。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は許容範囲。
反応内容:骨
2分34秒
0度
雪山に見えます。

全体が雪(空白部)、山だけが浮き出る。<?>白いよって。<どこから見てるの?>空から見てる。

反応領域:図版全体ならびに、空白の背景と白を用いた反応
決定因・形態水準:白黒の要素と形を用いた反応。形態水準は高い。
反応内容:景色

初発反応時間:21秒
反応終了時間:2分5秒
21秒
0度
動物の皮、皮のように見えます。

動物の骨を断ち割って、皮だけ残ってる。<?>全体が皮のように。<?>……。<?>皮に毛がついてあるところのように。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形と材質の要素を用いた反応。形態水準は高い。
反応内容:皮、平凡反応
1分30秒
180度
世界地図の図面のような。

これもヨーロッパ諸国の国が、図面に写っているように。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は許容範囲。
反応内容:地図
90度 雪山のように見えます。

全体が雪(空白部)、雪のかかってないとこだけ、残ってる。

反応領域:図版全体ならびに、空白の背景と白を用いた反応
決定因・形態水準:白黒の要素と形を用いた反応。
反応内容:景色

初発反応時間:42秒
反応終了時間:1分39秒
42秒
0度
雪山のように見えます。

全体、一面に白い中に浮き出てる。

反応領域:図版全体ならびに、空白の背景と白を用いた反応
決定因・形態水準:白黒の要素と形を用いた反応。形態水準は許容範囲。
反応内容:景色
1分
180度
鳥の羽、広げたように見えます。ハイ。

鳥が空を飛んでいるように見えるんです。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:動物

初発反応時間:14秒
反応終了時間:1分32秒
14秒
0度
勲章のマークのように見えます。

金鵄勲章のマークのように。

反応領域:図版全体を用いた反応。形態水準は高い。
決定因・形態水準:形のみに基づく反応、
反応内容:勲章
90度 弦楽器の楽器の音楽の何のように見えます。

三味線のギター、ギターです。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:音楽
180度 動物の皮のように見えます。

一匹の動物、骨を割って(D4+D6)、両側が皮でできている。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみと陰影を用いた反応
反応内容:皮、平凡反応

初発反応時間:12秒
反応終了時間:1分7秒
12秒
0度
島国のように見えます。

全体が海の中、突き出ているのが陸地。

反応領域:図版全体ならびに、空白の背景を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:島
90度 肉の塊みたいに。

魚か肉の塊が、図面に出てるんやと思います。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:内臓
180度 雪山のように見えます。

全体が白い中に浮いて出てるのが、図面のように見えます。雪の中にハッキリとうつって出てるのが山です。

反応領域:図版全体ならびに、空白の背景と白を用いた反応
決定因・形態水準:形のみと白黒の要素を用いた反応。形態水準は許容範囲。
反応内容:景色

初発反応時間:31秒
反応終了時間:1分17秒
31秒
0度
レントゲン写真のように思います。

骨(D3)、胸(D7)。<他は?>骨です。

反応領域:図版の比較的区別しやすい一部を用い、囲まれた空白部を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は許容範囲。
反応内容:レントゲン
270度 魚の肉と骨に見えます。

ヒラメか、カレイの魚のよう。<骨と肉?>真ん中と両側、骨、両側、ヒレです。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:形のみに基づく反応。形態水準は高い。
反応内容:内臓、骨、断定口調

初発反応時間:17秒
反応終了時間:2分27秒
17秒
0度
油壷に火がついているように思います。

うつわの上の方だけしか、映っていない(D1)。これが、煙と火です(D2+D3)。<色は?>関係ないです。やっぱり色です。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:不定形の色彩要素を用いた反応。形態水準は許容範囲。
反応内容:火
2分
270度
空の雲、夕暮れの雲のように。

夕暮れに、赤い雲とか(D1)、はっきり映る時。これは濃い薄いだけ(D2+D3)。

反応領域:図版全体を用いた反応
決定因・形態水準:不定形の色彩要素を用いた反応。形態水準は許容範囲。
反応内容:内臓、骨、断定口調

初発反応時間:1分16秒
反応終了時間:1分33秒
1分16秒
0度
雪山のように見えます。それでしまい。

分からんのです。

反応領域:図版全体ならびに、空白の背景と白を用いた反応
決定因・形態水準:形のみと白黒の要素を用いた反応。形態水準は許容範囲。
反応内容:景色
 反応数は比較的多いが、その多くが不定形の反応だった。また、「雪山」、「世界地図の図面」、「肉の塊」、「動物の皮」など、同一概念の繰り返し傾向がみられる。Ⅰ「観音さん」は、識別型形態による認知であり、それを他から分離した反応とすることができていない。Ⅰ「コウモリの絵がうつっとります」と「インクをこぼして、反故にする紙」では、「コウモリ」や「インクの染み」に明確に向かい合うことから後退して、背景が前面化してきている。また、空白の背景を用いた反応が多い。Ⅵ「弦楽器の楽器の音楽の何のよう」では、表現の進行と共に概念限定が逆行的に弛緩している。つまり、不定形対概念が主力になっており、図版に触発されて既存のものとなった内的着想が残遺して支配性を示していると考えられる。外輪郭形体が識別的に機能することからの退去を伴っている。さらに、Ⅰでカードの回転を鼓舞されてから、Ⅹ以外で忠実にカードの回転を繰り返しており、付与された条件への忠実すぎる受動性が見られる。また、色彩の多様性を処理可能な違いと位置付けることができず、例えば色彩が多様化しているⅩで、頻繁に用いていた「雪山」を使用することが躊躇されて「分からんのです」という反応に繋がっている。形と色彩は一方しか反応しておらず、複合した反応が見られない。主体性の後退と希薄化が見られ、これは長期にわたる病態への沈潜が関連していると考えられる。

5.3.2 発達障害に関する検査

 発達障害として問題になるのは、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)である。本資料では自閉症スペクトラム障害について扱う。
 自閉症スペクトラム障害は、社会的コミュニケーションの障害(他者とのかかわりの薄さ、養育者との愛着形成の困難、言語及び非言語コミュニケーションの障害、他者の意図や場の状況を判断することの困難)と限定された反復的な行動様式(こだわりや変化への抵抗、興味の限局)、多動・衝動性、不注意、協調運動障害、学習能力の偏りなどの特性を持つ。成人に対して行う検査には、本人に対して行うADOS-2とAQ、保護者に対して行うPARSとADI-Rがある。
5.3.2.1 ADOS-2
 Autism Diagnostic Observation Schedule。現在の意思伝達、相互的対人関係、遊び/想像力、限定的・反復的行動を評定することを目的とした、検査対象本人に対する半構造化面接。対人コミュニケーションなどの行動を数量的に段階評定し、アルゴリズムを使って「自閉症」「自閉症スペクトラム障害」「非自閉症スペクトラム障害」に分類する。検査の実施には研修による資格が必要とされ、標準化されたキットを使用する。成人に対しては、5つあるモジュールのうちモジュール4を使用する。所要時間は40~60分。
 モジュールは「観察」「評定」「アルゴリズム」から構成される。観察では、「働きかけ」と呼ばれる構造化された対人的課題を行うことで、相互的対人関係、意思伝達、限定的・反復的行動が現れやすい場面を作り出し、行動観察や質問を実施する。構造化されていない場面も組み合わせるため、検査場面というよりも日常的な対人コミュニケーション場面に近い。評定では、観察された行動に対して「言語と意思伝達」「相互的対人関係」「想像力/創造性」「常同行動と限定的興味」「他の異常行動」の5領域において0~2点または0~3点をつける。アルゴリズムでは、評定結果からいくつかの項目を抽出しカットオフ値に応じて「自閉症」「自閉症スペクトラム障害」「非自閉症スペクトラム障害」に分類する。
5.3.2.2 AQ
 自閉症スペクトラム指数。スクリーニング目的で使用される。50問の質問に対して、「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」「どちらかといえばあてはまらない」「あてはまらない」の4段階で〇をつけて回答する。「社会的スキル(社交的な場面が苦手、自分の置かれている社会的な状況が理解できない)」 「注意の切り替え(二つのことを同時にできない、没頭しやすい)」 「細部への関心(他の人が気づかない物音に気づく、数字や時刻表などの数字へのこだわりが強い、細かい点を気にし全体的なものの見方ができない)」 「コミュニケーション(雑談ができない)」 「想像力(作話されても気づかない、小説などを読んでも登場人物や背景が想像し難い、ごっこ遊びが苦手)」の下位尺度を持ち、各下位尺度の点数とAQ得点が得られる。AQ得点の満点は50点で、カットオフ値の33点以上だと自閉症スペクトラム障害の傾向が強い。所要時間は10~15分。
5.3.2.3 PARS-TR
 親面接式自閉症スペクトラム障害評定尺度。自閉症スペクトラム障害の特徴を把握するため、「対人」「コミュニケーション」「こだわり」「常同行動」「困難性」「併発性」「過敏症」「その他(不器用)」の8領域で評価する、検査対象の保護者に対する半構造化面接法。所要時間は23項目のみの短縮版で20分、フルバージョンで60分以上。
 保護者に面接を行い、全57項目(項目1~34を幼児期ピーク評定、項目25~57を現在評定とする)の症状について頻度と程度に基づき、0(なし)、1(多少目立つ)、2(目立つ)の3段階で評定する。分析では、評定の数字を加算し、年齢帯に応じたカットオフ値により判定する。幼児期ピーク評定と現在評定による判定のいずれかが「自閉症スペクトラム障害が強く示唆される」結果であれば、自閉症スペクトラム障害と判定される。
5.3.2.4 ADI-R
 自閉症診断面接。自閉症スペクトラム障害の診断と症状評価について、評価者の知識や経験によるばらつきを少なくすることを目的とした、検査対象の保護者に対する面接法。「面接プロトコル」と「包括的アルゴリズム」から構成される。所要時間は面接プロトコルの実施に90~120分、包括的アルゴリズムの分析に15~30分。
 まず、保護者に対して直接対面での個別面接を行い、面接プロトコルの93項目の質問を順番に聞いていく。太字の必須項目の聞き取りを行ったうえで、項目の意図している内容を評価できるよう必要な追加の質問を行う。項目の行動や特徴の頻度や深刻さにより、0から3のコードを付ける。
 続いて、包括的アルゴリズムにより回答内容をスコア化する。結果は、発達歴全体を踏まえて診断する「診断アルゴリズム」と、現在の日常生活で観察された行動をもとに診断する「現在症アルゴリズム」がある。どちらも、(A)相互的対人関係の質的異常、(B)意思伝達の質的異常、(C)限定的・反復的・常道的行動様式、(D)36ヵ月までに顕在化した発達異常、の4領域から構成される。コード1を1点、コード2または3を2点として、領域ごとに合計スコアを求め、診断アルゴリズムのみカットオフ値と比較して評価を行う。(A)(B)(C)のスコアがすべてカットオフ値より低い場合は自閉症スペクトラム障害の可能性は低く、4領域のスコアがすべてカットオフ値を超えている場合は自閉症スペクトラム障害の存在を強く示唆する。

5.3.3 知能検査

 知能検査のうち、成人に使用可能な田中ビネー知能検査、WAIS-Ⅲを紹介し、精神鑑定で使用することがありWAIS-Ⅲの児童版であるWISC-Ⅳをおまけで紹介する。
5.3.3.1 田中ビネー知能検査
 知的発達の進み具合や遅れ具合をトータルに捉えることを目的とし、基礎的な能力を把握することに優れている。所要時間は60~90分。
 検査は多くの道具を使用して行い、成人の場合はA01~A17の問題をすべてこなす。分析では、全問題を通過できた年齢級が基底年齢となる。基底年齢より上の年齢級で通過した問題数に、それぞれ決められた加算月数をかけて基底年齢に加算し、精神年齢を算出する。精神年齢を実年齢で割り、100をかけたものがIQとなる。
5.3.3.2 WAIS-Ⅲ
 ウェクスラー成人知能検査。成人の知能を測定することを目的とし、質的に異なる知能を多面的に解釈できる。知能には言語性知能と動作性知能があるとし、言語性知能は言語理解と作動記憶の2つの群指数から構成され、動作性知能は知覚統合と処理速度の2つの群指数から構成される。対象は16歳から89歳。所要時間は60~95分。
 検査では、14種類の下位検査に対して、口頭や筆記や手ぶりで回答する。一部の検査は制限時間があり、他の検査についても30秒が経過すると次の問題に移ることを催促される。検査中は回答だけでなく、取り組みの様子や行動も記録される。一部の問題にはクエリーのマーク(Q)がついており、回答を明確にするために質問が行われ、「答えを分からなかった」「制限時間を超えた」「無反応」を記録する。分析では、下位検査の粗点を算出し、粗点から評価点に換算し、評価点を合計し、まず全検査IQと言語性IQと動作性IQの評価を行う。IQは同年齢帯の平均値を100、標準偏差を15としており、つまりIQ85~115が同年齢帯の68%を占め正常域とされる。言語性知能は聴覚情報を理解し、言葉によって他社に伝える能力であり、動作性知能は視覚情報を理解し、物事の関係性を捉える能力である。これらのバランスから検査対象の知的能力を解釈する。続いて群指数の評価を行う。言語理解は言語の理解と表現の能力水準、作動記憶は短期記憶の処理と捜査の能力水準、知覚統合は視覚情報の知覚と認知の能力水準、処理速度は情報を処理するスピードの能力水準である。4つのバランスや差(ディスクレパンシー)から解釈を行う。続いて下位検査の評価を行うことで、検査対象の知的能力を細かく解釈する。最後に観察結果の評価を行い、集中力や注意の範囲、不安の高さなどを考慮する。

 下位検査は、絵画完成(絵の中で欠けている部分を指摘させ、位置空間関係を測定)、単語(単語の意味を問い、語彙の知識を測定)、符号(ヒントから数字の下に記号を書き、事務的処理の速さを測定)、類似(AとBはどこが似ているか問い、言語発達や語彙の知識を測定)、積木模様(モデルと同じ模様の積み木を作らせ、同時総合機能を測定)、算数(算数を暗算で行い、算数能力を測定)、行列推理(空欄に当てはまる選択肢を選び、一般逐次的推理を測定)、数唱(読み上げる数字を順・逆に回答させ、メモリースパンを測定)、知識(一般的な知識を問い、語彙の知識を測定)、絵画配列(物語のカードを順番に並べ、時間概念を測定)、理解(Aなのはなぜか、Bのときどうするか等を問い、一般的な知識を測定)、記号探し(提示されたのと同じ記号を特定し、知覚処理速度を測定)、語音整列(数字と仮名を昇順に並び替え、ワーキングメモリを測定)、組合せ(ピースを組み合わせて形状を作成し、感覚運動能力を測定)の順で実施される。

IQ 全検査
言語性 動作性
群指数 言語理解 同時尺度 知覚統合 処理速度
下位検査 単語 類似 知識 理解 算数 数唱 語音整列 絵画配列 絵画完成 積木模様 行列推理 符号 記号探し 組合せ
5.3.3.3 WISC-Ⅳ
 ウェクスラー児童用知能検査。児童の能力を様々な角度から測定することを目的とする知能測定のための臨床検査。対象は5歳から16歳。所要時間は60~80分。
 検査では、10種類の下位検査と5種類の補助検査に対して、口頭や筆記や手ぶりで回答する。検査中は回答だけでなく、取り組みの様子や行動、下位検査を補助検査に代替した履歴も記録される。一部の問題にはクエリーのマーク(Q)がついており、回答を明確にするために質問が行われ、「答えを分からなかった」「制限時間を超えた」「無反応」を記録する。複数回答した場合は、どれが回答か質問されるか、最も良い回答が使用される。分析では、4つの合成得点(言語理解(VCI)、知覚推理(PRI)、ワーキングメモリ(WMI)、処理速度(PSI))とそれらを統合した全検査IQが算出される。合成得点間や下位検査得点間の差(ディスクレパンシー)やプロセス得点などを算出することにより、能力のアンバランスさなども測定することができ、知的障害以外の障害特性を特定できる。
 VCIは類似、単語、理解、知識、語の推理(ヒントから共通概念を特定し、語彙の知識を測定)から構成される。PRIは、積木模様、絵の概念(複数の絵から共通の特徴を持った絵を選択し、機能的推理を測定)、行列推理、絵の完成から構成される。WMIは、数唱、語音整列、算数から構成される。PSIは、符号、記号探し、絵の抹消(提示されたのと同じ動物の絵を特定し、知覚処理速度を測定)から構成される。

5.3.4 人格・心の健康に関する検査

 質問紙を用いる、人の全般的な特徴を捉える人格検査として、TEG、YG性格検査、MPIがある。臨床的な視点から人格特徴を捉える人格検査として、MMPIがある。質問紙を用いない人格検査として、P-Fスタディと内田クレペリン精神検査、後述する投影法がある。心の健康に関する検査として、全般的な心の健康に関するCMIとGHQ精神健康調査票がある。特定の症状に焦点を当てた質問紙として、抑うつに焦点を当てたSDSがある。自然災害や大きな事件、事故等に見舞われた際の心の状態を明らかにする質問紙としてIES-Rがある。
5.3.4.1 TEG-Ⅲ
 東大式エゴグラム。エゴグラムとは「個人のパーソナリティの各部分同士の関係と、外部に放出している心的エネルギー量を棒グラフで表したもの」である。自分の自我状態に気付き自己分析するためのツールとして使用し、自己成長や対人関係の改善に役立てることを目的とする。自我状態(親、大人、子供から構成される5種類)の心的エネルギーの配分状況をグラフで視覚的に把握できる。所要時間は回答に10分、採点に5分。
 自我状態である、CP、NP、A、FC、ACの5尺度それぞれに10項目、妥当性尺度3項目の合計53項目から構成されている。各質問項目が自分に当てはまるかについて、質問紙の「はい」「どちらでもない」「いいえ」の□に〇をつける。採点は自身で行い、「はい」は2点、「どちらでもない」は1点、「いいえ」は0点とし、尺度ごとの得点を計算する。男女別に得点配置図があるので、それに従い棒グラフを作成し、エゴグラム・プロフィール表を完成させる。5段階(0~5%、5~25%、25~75%、75~95%、95~100%)のうち、各尺度がどの段階にあるかを確認する。
 自我状態について、親は、自分を育ててくれた親または養育者から取り入れた自我状態を指し、批判的親の状態CPと養育的親の状態NPに分かれる。大人は、客観的事実をもとに物事を客観的かつ論理的に理解し、判断しようとする自我状態である。子供は、生まれ持った本能的な直感や情緒に深くかかわり、幼いころ身に付けた行動様式や感情を表現する自我状態を指し、自由な子供の状態FCと順応した子供の状態ACに分かれる。妥当性尺度が3点以上の場合は、信頼性が乏しい。疑問尺度は「どちらでもない」を答えた件数であり、32点以上は判断不能。5尺度のうち1つだけ高い場合は、その尺度の自我機能が優勢に発揮されている状態。5尺度のうち1つだけ低い場合は、その尺度の自我機能が抑制されている状態。5尺度のうち2つあるいは3つの尺度が同程度に高いまたは低い場合は、混合型の状態。混合型のうちCPとNPが高い場合はP優位型、FCとACが高い場合はC優位型。5尺度がすべて同程度である場合は平坦型とし、段階によって高い平坦型、中程度の平坦型、低い平坦型に分類される。
5.3.4.2 YG性格検査
 矢田部-ギルフォード性格検査。12尺度と6因子の得点水準から、15の類型に分類する。情緒的特性や人間関係特性、行動特性、知的活動特性等を把握することができ、これらから総合的に判断する。集団で実施でき、質問項目が少なく、テスト結果の解析が比較的優しいため、手軽に実施できる。所要時間は30分。
 検査者が質問項目を1問5~7秒ほどで読み上げ、検査対象は次を読み上げるまでに回答することで検査を進める(自身に有利な回答を選びにくい)。質問に当てはまる場合は「はい」の欄に〇を、当てはまらない場合は「いいえ」の欄に〇を、決められない場合は「?」の欄に△を記入する。訂正する場合は、訂正前を残して、訂正後を塗りつぶす。採点では、〇は2点、△は1点、塗りつぶした〇と△は0点として、尺度ごとに計算する。計算した数字の位置を線で結ぶことにより、プロフィールを作成する。また、作図スペースにおいて6個に分割された区画での系統値の傾向から15類型に分類する。また、尺度の粗点の中で非常に高いものや低いものから性格特性を把握できる。同一因子内の尺度得点が類似しているか調べ、かけ離れている場合は検査態度の不適切さや人格構造の矛盾が疑われる。プロフィールは5つの類型に典型、準型、混合型の3種類をかけた15の類型から全体的な特徴を読み取れる。
 6因子は、情緒的安定、社会的適応、非活動的、非衝動的、内省的、非主導的から構成される。12尺度は、抑うつ性、気分の変化、劣等感、神経質、主観性、非協調性、攻撃性、一般的活動性、のんきさ、思考的外向性、支配性、社会的外向性から構成される。5つの類型は、A型(平均型:情緒安定性は平均、社会適応は平均、向性は平均)、B型(不安定積極型:情緒安定性は不安定、社会適応は不適応、向性は外向)、C型(安定消極型:情緒安定性は安定、社会適応は適応、向性は内向)、D型(安定積極型:情緒安定性は安定、社会適応は適応または平均、向性は外向)、E型(不安定消極型:情緒安定性は不安定、社会適応は不適応または平均、向性は内向)から構成される。
5.3.4.3 MPI
 モーズレイ性格検査。「外向性-内向性」と「神経症的傾向」の基本的な性格特性を、9つの性格像で判定する。所要時間は、15~30分。
 検査用紙に書かれた80項目の質問(「たのまれたことは すぐやるほうですか」「いつも ほがらかですか」「人の世話が好きですか」等)に対して、「はい」「?」「いいえ」のいずれかに〇をつける。この際、検査者は検査対象からの項目についての質問に答えてはならないことになっている。採点は、採点盤に従い「はい」「いいえ」が2点、「?」が1点として各尺度の粗点を計算する。「?」が20個以上あるかL尺度が20点以上の場合は再検査が行われる。判定では、平均点や標準偏差を基にした判定チャートを使用し、E-N得点の高低により9つの性格像(E+N+型、E0N+型、E-N+型、E+N0型、E0N0型、E-N0型、E+N-型、E0N-型、E-N-型)で示される。E-N得点の偏倚が著しい場合、得点の傾向によって次のことが言える。①N得点が高い場合、精神障害の可能性がある。②E得点が高くN得点が低い場合、精神病質や躁状態の可能性がある。③E得点が低すぎる場合、N得点によらず問題児の可能性がある。④極端なE-N-型、E+N-型、E-N+型は統合失調症や器質的障害の可能性がある。ただし、うつ病、アルコール中毒、その他の精神障害では診断と検査結果が一致しないことがある。
 80項目のうち、「外向性-内向性」尺度(E尺度)が24項目、「神経症的傾向」尺度(N尺度)が24項目、虚偽発見尺度(L尺度)が20項目、E-N尺度に似た内容が12項目を占める。最後の12項目は採点されないが、検査目的をあいまいにしたり、矛盾した回答を検出する役割を持つ。E尺度は、高いほど外向的で、低いほど内向的。
5.3.4.4 MMPI
 ミネソタ多面的人格目録。検査の結果を歪曲させる回答をしていないか検証できるほか、多面的にパーソナリティを把握できる特徴を持つ。所要時間は60~90分。
 カード式と冊子式があり、カード式は1項目が1枚に印刷された550枚のカードを使用し、冊子式は550項目が番号順に印刷された冊子を使用する。例えば「私は事務関係の仕事が好きだ」「初対面で話しかけられることが多い」といった項目に対して、自身に「あてはまる」か「あてはまらない」かを分類し、「どちらともいえない」は極力選ばず10個未満に抑える。採点では、各尺度での粗点を算出したうえで、標準化集団の平均や標準偏差を用いて各尺度でのT得点に換算して(一部の尺度はK修正も行い)プロフィール上に記載する。プロフィールの特徴は、高い順に並べて記号化して表すことが行われる。解釈では、まず妥当性尺度のパターンから受験態度を調べ、意味のあるプロフィールかを判断する。次に、臨床尺度全般の上昇などから適応水準を、プロフィールパターンから検査対象の特徴を調べる。例えば、神経症の人はHs、D、Hyが高く、Pa、Pt、Sc、Maが低いプロフィールになりやすく、精神病の人は逆にHs、D、Hyが低く、Pa、Pt、Sc、Maが高い傾向が多いとされる。

 550の項目は、精神的健康、身体的健康、家族、職業、教育、性、社会、政治、宗教、文化等についての態度に関する。採点は4個の妥当性尺度と10個の臨床尺度で行われ、これらの尺度を合わせて基礎尺度と呼ぶ。妥当性尺度は、?(疑問尺度。「どちらともいえない」の数)、L(虚偽尺度。社会的には望ましいが実際には困難で、被験者が自分を好ましく見せようとする傾向)、F(頻度尺度。出現率の低い回答をした数を表しており、風変わりな回答や自分を悪く見せようとする傾向)、K(修正尺度。検査に対する警戒の程度)がある。例えば、LFKが山型になっている場合、援助を望むあまり症状を誇張している傾向がある。臨床尺度は下表の通り。

尺度 高得点時の解釈 低得点時の解釈
第1尺度
Hs(心気症)
身体不調を訴えることによる他者操作 楽天的
第2尺度
D(抑うつ)
抑うつ的 社交的
第3尺度
Hy(ヒステリー)
身体症状による責任回避、洞察欠如、未熟で表面的 委縮して周囲に同調的
第4尺度
Pd(精神病質的偏奇性)
精神病質的、反社会的な反抗と敵意 受動的同調的
第5尺度
Mf(男子性・女子性)
男性:女性的な性格や態度
女性:女性らしさにこだわらない
男性:自信の無さから男らしい男にこだわる
女性:女らしい女にこだわる
第6尺度
Pa(パラノイア)
懐疑心や独善傾向が強い 適応的か、対人的に過敏かどちらか
第7尺度
Pt(神経衰弱)
緊張感、不安感が強い 情緒安定、自分に満足
第8尺度
Sc(統合失調症)
奇妙で風変わり、疎外感 現実的
第9尺度
Ma(軽躁病)
活動性が高い 衝動的
第0尺度
Si(社会的内向性)
内向的 社交的
5.3.4.5 P-Fスタディ
 絵画欲求不満テスト。主張行動や攻撃行動を含むすべての目標思考行動をアグレッションと定義し、その中でも特に対人関係に起因するフラストレーション状況下でのアグレッション反応を測定する検査。所要時間は20~30分。
 テスト用紙には、日常的に誰でも経験する欲求不満場面が絵で24場面描かれている。いずれも、不満を引き起こす左側の人物のセリフを読み、右側の人物がどのように答えるかについて、絵の中の空欄に記入する。自己批判的な気持ちを抱かせないように、「自分がどう答えるか」ではなく「右側の人物がどう答えるか」を回答することを検査者は事前に強調する。欲求不満場面は、16場面の自我阻害場面(人為的、非人為的な障害によって直接に自我が阻害されて欲求不満を引き起こしている場面)と、8場面の超自我阻害場面(誰か他の者から非難され(良心の呵責が生じ)欲求不満を引き起こしている場面)に分類できる。各場面に対する回答は、アグレッションの方向とアグレッションの型の2つの次元に分類され、11種類の評定因子から記号化する。記号の出現頻度を健常群と比較することで、反応の特色を把握できる。標準的な典型的反応と比較し集団一致度GCRを求めることで、欲求不満場面への適応が困難か調べられる。テストの前半と後半での反応の質の差から、テストに関する心構えや心理行動が分かる。

 評価因子は下表の通り。

障害優位型 自我防衛型 欲求固執型
他責的 他責逡巡反応(欲求不満を起こさせた障害の指摘は強調にとどめる) 他罰反応(とがめ、敵意などを人や物に直接向ける) 他責固執反応(他人が欲求不満を解決することを期待する)
他罰反応の変型(とがめられても自分には責任が無いと否認する)
自責的 自責逡巡反応(欲求不満を起こさせた障害の指摘は内にとどめる) 自罰反応(とがめが自身に向けられ、自責・自己非難する) 自責固執反応(自ら欲求不満の解決のため努力したり、賠償を申し出る)
自罰反応の変型(環境が悪いとして本質的には失敗を認めない)
無責的 無責逡巡反応(欲求不満を引き起こさせた障害の指摘は最小限にとどめるか、存在を否定する) 無罰反応(非難を回避するか、不可避なものとして欲求不満を引き起こさせた人物を許す反応) 無責固執反応(時の経過や予期される事態が欲求不満の解決をもたらすことを期待)
5.3.4.6 内田クレペリン精神検査
 連続加算法を用いて、作業の処理能力や、性格、行動ぶり、仕事ぶりの特徴を把握する。所要時間は、60分。
 検査用紙には、整列した116個×17行の一桁の数字が2段印刷されている。開始の号令と共に、検査対象は隣り合う数字を加算し、結果の一の桁だけを、加算した数字の間に書く。60秒ごとに「はい、次」の号令がかかるので、次の行に取り掛かり、15回目が終わったところで、用紙を裏返して5分ほど休憩する。再開後は、60秒ごとに「はい、次」の号令が15回かかり、16回目は10秒で「はい、やめて。鉛筆おいて」と指示が出る。分析では、最終到達点を赤鉛筆で結び、作業曲線を描く。また、やや太くなっている目盛線に青鉛筆で線を引き、量級線を描く。続いて誤答と脱字の位置をチェックをするが、まず前期と後期の11行目を調べて、誤答が3個以上あれば10行目と12行目も調べ、かなり誤答があるようなら全行を調べる。量級段階と作業曲線の特徴、誤りの状態から、24の類型に分類する。発動性(物事への慣れ)、可変性(物事を進める際の気分の変化、柔軟性)、亢進性(物事を進める勢い、持久性)
 量級段階は作業量に応じて、5段階(D、O、B、A、Ⓐ)ある。この各段階は、作業曲線の特徴や誤りの状態をもとに2~6に分類される。定型の特徴は、①前期がU字型、②後期が右下がり、③前期に対し後期作業量が全体に増加、④曲線に適度な動揺がある、⑤誤答が無い、⑥作業量が極端に低くない(60個以上)、がある。非定型の特徴は、①誤答が多発、②大きい落ち込み、③大きい突出、④激しい動揺、⑤動揺の欠如、⑥後期作業量の下落、⑦後期初頭の著しい出不足、⑧作業量の著しい不足、⑨その他(曲線範囲の過大、文字の判読困難、作業放棄)、がある。

 24の類型としては、a~dのアルファベットで作業量を表し(aは作業量が多く、bは作業量が下がり、cやdは作業量が少ない)、続く記号で非定型の強さ(個性の強さ)を表す(無印が高度定型で、’がつくと定型、fがつくと準定型、f(A)やf(B)がつくと非定型、f(C)やpは重度非定型)。例えば下図のような傾向なら、「a’f一定型」であり、「気がよく回り、時に細かく気にする。あまり表立たないが気づかいすることが多く、気疲れしやすい。」とされる。

内田クレペリン精神検査1

 下図の傾向なら、「a’f~f(A)一準定型」であり、「気負いすぎてかえって躓きやすい。意欲的だがやや自分のペースを乱しやすい。」とされる。

内田クレペリン精神検査2
5.3.4.7 CMI
 Cornell Medical Index。医師による初診時の問診が質問紙に書かれており、心身両面における自覚症状を短時間のうちに調査することを目的とする。所要時間は、30分。
 検査用紙に記載された、身体的項目144項目(日本語版は男子16項目、女子18項目が追加)の質問と、精神的項目51項目の質問に対して「はい」「いいえ」で回答する。分析では、自覚症プロフィール表のA~R行の各セクションの合計点を記入し、C、I、Jの合計点を縦軸、M~Rの合計点を横軸として神経症判別図を作成する。図は領域Ⅰ~Ⅳの領域に区切られており、領域Ⅳに近づくほど神経症の可能性が高い。また、質問中で特に注意が必要な9つの特定すべき精神的項目に「はい」と回答している場合も判定に用いられる。
 身体的項目は、A(目と耳)が10項目、B(呼吸器系)が21項目、C(心臓脈管系)が14項目、D(消化器系)が28項目、E(筋肉骨格系)が10項目、F(皮膚)が9項目、G(神経系)が19項目、H(泌尿生殖器系)が11項目、I(疲労度)が7項目、J(疾病頻度)が9項目、K(既往歴)が15項目、L(習慣)が7項目の合計144項目から構成される。精神的項目は、M(不適応)が12項目、N(抑うつ)が6項目、O(不安)が9項目、P(過敏)が6項目、Q(怒り)が9項目、R(緊張)が9項目の合計51項目から構成される。特定すべき精神的項目は、憂うつ、希望が無い、自殺傾向、神経症の既往、精神病院入院既往、家族精神病院入院既往、易怒性、強迫観念、理由のないおびえ、の9項目から構成される。
5.3.4.8 GHQ精神健康調査票
 分化、言語、宗教、社会に依存しない質問内容によって、精神的健康度と症状の評価を行うことを目的としたスクリーニングテスト。所要時間は10~15分で、短縮版は5~7分。
 検査用紙に書かれた質問について、4つの選択肢の中から自分の現在の状態に当てはまるものに〇を記入する。採点では、左2つの選択肢はそれぞれ0点、右2つはそれぞれ1点とし、合計点数をGHQ合計得点とする。カットオフポイントは、GHQ60では16/17点、GHQ30では6/7点、GHQ28では5/6点となっている。

 GHQ60(原版)は60項目の質問がある。GHQ30は「一般的疾患性」、「身体的症状」、「睡眠障害」、「社会的活動障害」、「不安と気分変調」、「重篤なうつ傾向」の6因子からなる30項目の質問がある。GHQ28は「身体的症状」、「不安と不眠」、「社会的活動障害」、「重篤なうつ傾向」の4因子からなる28項目の質問がある。例えば、GHQ28は下表の質問から構成される。

因子 質問 答え
身体的症状 気分や健康状態は よかった、いつもと変わらなかった、悪かった、非常に悪かった
疲労回復剤(ドリンク、ビタミン剤など)を飲みたいと思ったことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
元気がなく疲れたと感じたことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
病気だと感じたことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
頭痛がしたことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
頭が重いように感じたことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
体がほてったり、寒気がしたことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
不安と不眠 心配事があって、よく眠れないようなことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
夜中に目を覚ますことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
いつもよりストレスを感じることが まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
いらいらして、おこりっぽくなることは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
たいした理由がないのに、何かこわくなったり取り乱すことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
いつもより、いろいろなことを重荷と感じたことは まったくなかった、いつもと変わらなかった、あった、たびたびあった
不安を感じ、緊張したことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
社会的活動障害 いつもより、忙しくて活動的な生活を送ることが たびたびあった、いつもと変わらなかった、なかった、まったくなかった
いつもより、何かをするのによけいに時間がかかることが まったくなかった、いつもと変わらなかった、あった、たびたびあった
いつもより、すべてがうまくいっていると感じることが たびたびあった、いつもと変わらなかった、なかった、まったくなかった
毎日している勉強は とてもうまくいった、いつもと変わらなかった、うまくいかなかった、まったくうまくいかなかった
いつもより、自分のしていることに生きがいを感じることが あった、いつもと変わらなかった、なかった、まったくなかった
いつもより、かんたんにものごとを決めることが できた、いつもと変わらなかった、できなかった、まったくできなかった
いつもより、ふだんの生活を楽しく送ることが できた、いつもと変わらなかった、できなかった、まったくできなかった
重篤なうつ傾向 自分は役に立たない人間だと考えたことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
人生にまったく望みを失ったと感じたことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
生きていることに意味がないと感じたことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
この世から消えてしまいたいことが まったくなかった、なかった、一瞬あった、たびたびあった
ノイローゼ気味で何もすることができないと考えたことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
死んだほうがましだと考えたことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
自殺しようと考えたことは まったくなかった、あまりなかった、あった、たびたびあった
5.3.4.9 SDS
 自己評価式抑うつ性尺度。うつ病もしくは抑うつ状態像の把握を目的とする、質問紙に回答するタイプの検査。所要時間は、10~15分。
 検査用紙の上部にある「Global Rating」には、検査者の面接時の印象によって1(軽度)~5(重度)のいずれかに〇がつけてある。20項目の状態について、検査時の状態にもっともよくあてはまるものを、「ないかたまに」「ときどき」「かなりのあいだ」「ほとんどいつも」から選択して〇をつける。第6項目の性欲に関する質問では、独身者の場合は異性に対する関心の程度を答える。表現形式の半分は逆転項目になっており、検査対象には答案のパターンが読み取りづらくなっている。分析では、各項目について段階に応じて1~4点が割り振られており、合計した点数をSDS粗点とする。最低20点、最高80点であり、点数が高いほど抑うつ性が強い。40~47点を軽度、48~55点を中等度、56点~を重度と判定する。
 質問の20項目は、抑うつ主感情2項目(抑うつ、啼泣)、身体的症状8項目(日内変動、睡眠、食欲、性欲、体重減少、便秘、心悸亢進、疲労)、精神的症状10項目(混乱、精神運動性減退、精神運動性興奮、希望のなさ、焦燥、不決断、自己過小評価、空虚、自殺念慮、不満足)から構成される。
5.3.4.10 BDI-Ⅱ
 ベック抑うつ尺度。抑うつ症状の有無と程度の把握を目的とし、質問紙に回答するタイプの検査。
 21項目に対して、過去2週間の状態にもっともよく当てはまるものを、4つの選択肢から選択して回答する。採点では、選択肢の番号が得点であるので、合計得点を計算する。1~10点は「正常範囲の気分の揺れ」、11~16点は「軽度の気分の動揺」、17~20点は「うつとの境界域」、21~30点は「中等度のうつ状態」、31~40点は「重度のうつ状態」、41点以上は「極度のうつ状態」とされる。

 選択肢は下表の通り。

番号 選択肢
1 0 悲しい感じはしない
1 悲しい感じがする
2 いつも悲しく感じて、追い払えない
3 耐えられないほど悲しくて、不幸である
2 0 将来をとくに悲観するようなことはない
1 将来を悲観してしまう
2 将来に何の期待もないように感じる
3 将来は絶望的で、良くなることはないと感じる
3 0 自分が失敗者だとは思わない
1 私は他の人よりも失敗してきたと思う
2 これまで失敗の連続だったと思う
3 私は人間としてまったくの失敗者だと思う
4 0 これまでと同じように満足感を感じる
1 以前のようにものごとを楽しむことができない
2 本当に満足できるようなことはなくなった
3 何もかも不満足で、うんざりする
5 0 とくに罪悪感を感じるようなことはない
1 罪悪感を感じることが多い
2 ほとんどの時間、罪悪感に悩まされる
3 いつも罪悪感を抱いている
6 0 自分がなにかの罰を受けているとは思わない
1 自分は罰を受けるかもしれないと思う
2 自分は罰を受けるにちがいないと思う
3 自分は、今、罰を受けていると思う
7 0 自分に失望してはいない
1 自分に失望している
2 自分にうんざりする
3 自分を憎んでいる
8 0 自分が他の人より劣っているとは思わない
1 自分の弱さやあやまちに対し批判的である
2 自分の欠点をいつも攻めている
3 何か悪いことが起こると、いつも自分のせいだと自らを責める
9 0 自殺を考えるようなことはない
1 死にたいと思うことはあるが、実行することはないだろう
2 自殺したいと思う
3 もし機会があったら自殺するだろう
10 0 いつもより泣きやすくなったとは思わない
1 以前とくらべ泣いてしまうことが多い
2 いつも泣いてばかりいる
3 以前は泣くことができたが、今はそうしたくてもできない
11 0 これまで以上にイライラするようなことはない
1 以前と比べイライラすることが少し増えた
2 かなりの時間、イライラした気分である
3 たえずイライラしている
12 0 他の人に対する関心を失ってはいない
1 以前とくらべ他の人に関心を持たなくなった
2 他の人に対してほとんど関心がなくなった
3 他の人に対してまったく関心がわかない
13 0 これまでと同じようにものごとを判断できる
1 以前とくらべ判断を先送りするようになった
2 なにかにつけて決めることがとても難しい
3 まったく何も決めることができない
14 0 とくに自分の魅力がおとろえたとは思わない
1 老けて見えるのではないか、魅力がないのではないかと心配である
2 もう自分の容姿は変わってしまい、魅力がなくなったように感じる
3 自分は醜いにちがいないと思う
15 0 だいたいこれまでと同じように働ける
1 何かをやり始めるのにかなり努力がいる
2 何をやるのにも相当な努力がいる
3 何もできなくなってしまった
16 0 いつもどおりよく眠れる
1 以前とくらべよく眠れない
2 いつもより1~2時間早く目が覚め、再び寝つくのが難しい
3 いつもより数時間も早く目が覚め、再び寝つくことができない
17 0 いつもより疲れた感じはない
1 これまでより疲れやすくなった
2 何をやってもすぐ疲れる
3 疲れてしまって何もできない
18 0 いつもどおり食欲はある
1 以前とくらべ食欲がない
2 食欲がかなり落ちている
3 まったく食欲がない
19 0 最近、とくにやせたということはない
1 最近2kg以上やせた
2 最近4kg以上やせた
3 最近6kg以上やせた
20 0 体の調子がとくに気になることはない
1 痛み、胃の不快感、便秘などの体の調子が気になる
2 体の調子が気になって、他のことを考えるのが難しい
3 体の調子ばかり心配し、他のことはまったく考えられない
21 0 性に対する関心はこれまでと変わりない
1 以前とくらべ性欲が低下した
2 性欲がほとんどない
3 性欲がまったくない
5.3.4.11 IES-R
 改定出来事インパクト尺度。心的外傷性ストレス症状の程度の測定と評価を目的とする、質問紙に回答するタイプの検査。所要時間は、5~10分。
 最近の1週間の状態を振り返り、22項目の質問についてどの程度強く悩まされたかを、「まったくなし」「少し」「中くらい」「かなり」「非常に」の5程度のいずれかに〇をつけて回答する。分析では、「まったくなし」が0点、「少し」が1点、「中くらい」が2点、「かなり」が3点、「非常に」が4点とし、全体ないし下位尺度ごとの得点を計算する。高得点であるほど苦痛の程度が大きいと考えられ、24/25をカットオフポイントとする。

 質問と対応する下位尺度は下表の通りである。

番号 質問 対応する下位尺度
1 どんなきっかけでも,そのことを思い出すと,そのときの気もちがぶりかえしてくる。 侵入症状
2 睡眠の途中で目がさめてしまう。 侵入症状
3 別のことをしていても,そのことが頭から離れない。 侵入症状
4 イライラして,怒りっぽくなっている。 過覚醒症状
5 そのことについて考えたり思い出すときは,なんとか気を落ちつかせるようにしている。 回避症状
6 考えるつもりはないのに,そのことを考えてしまうことがある。 侵入症状
7 そのことは,実際には起きなかったとか,現実のことではなかったような気がする。 回避症状
8 そのことを思い出させるものには近よらない。 回避症状
9 そのときの場面が,いきなり頭にうかんでくる。 侵入症状
10 神経が敏感になっていて,ちょっとしたことでどきっとしてしまう。 過覚醒症状
11 そのことは考えないようにしている。 回避症状
12 そのことについては,まだいろいろな気もちがあるが,それには触れないようにしている。 回避症状
13 そのことについての感情は,マヒしたようである。 回避症状
14 気がつくと,まるでそのときにもどってしまったかのように,ふるまったり感じたりすることがある。 侵入症状
15 寝つきが悪い。 過覚醒症状
16 そのことについて,感情が強くこみあげてくることがある。 侵入症状
17 そのことを何とか忘れようとしている。 回避症状
18 ものごとに集中できない。 過覚醒症状
19 そのことを思い出すと,身体が反応して,汗ばんだり,息苦しくなったり,むかむかしたり,どきどきすることがある。 過覚醒症状
20 そのことについての夢を見る。 侵入症状
21 警戒して用心深くなっている気がする。 過覚醒症状
22 そのことについては話さないようにしている。 回避症状

5.3.5 投影法

 投影法心理検査は、非構造的な刺激状況(白紙が渡される、木を描くように言われる、短い言葉の続きの文章を書くように指示される、など)を検査対象がどのように解釈し、意味を与え、体制づけていくかを知ることによって、その人固有の体験の在り方について洞察を得る方法である。フロイトの言う防衛機制における投影のメカニズムと同じように、自分にとって好ましくない感情や欲求を、それを意識することによって引き起こされる心的苦痛や不安を避けるために無意識に追いやり、外在化させる現象とされる。
5.3.5.1 TAT/CAT
 主題統覚検査、絵画統覚検査。TATは成人向けで、CATは幼児・児童向け、SATは高齢者向け。絵に対して物語を作ることで、検査対象のパーソナリティを明らかにすることを目的とした検査。所要時間は、90分。
 白紙図版を1枚含む31枚の図版から、20枚ないし10枚を検査者が選択して使用する。検査対象は図版の絵を見て、現在・過去・未来の話を作る。この際、言葉、態度や表情、沈黙は記録され、初発反応時間や反応終了時間が計測される。知覚レベル、言語レベル、物語の意味の不明確さがみられる場合は、質疑を行うことがある。分析には多様な方法がある。赤塚の手法によれば、12の視点(反応時間、叙述の有無と叙述量、未来での課題解決の様相、主人公の考え方や生き方、主人公が持つ欲求と圧力、画面外の登場人物と画面ない人物の省略、言葉の形式的特徴、ストーリーの内容の特徴、図版から母子関係や父子関係を捉えるか、図版特性から得られる臨床情報、精神分析的枠組み、実施図版における反応)をもとに、8の解釈(家族関係、恋愛・夫婦関係、性的な成熟度、その他の対人関係、仕事、パーソナリティ特性や行動特性、病理性や病態水準、心理療法の適応性)を行う。

 10枚のみで検査する場合は、男性は1、2、3BM、4、6BM、7BM、11、12M、13MFを、女性は1、2、3BM、4、6GF、7GF、9GF、11、13MFの使用が提案されている。ここでアルファベットはマレー図版が指示しているB=少年、M=成人男性、G=少女、F=成人女性を指す。TATの代表的な図版は下表。

図版 図版の内容
1 子どもとバイオリンの図。家族に関するテーマ。
2 農場と女性(正面向)と男性(背面向)の図。家族や対人関係に関するテーマ。
3BM 家具にもたれかかる人(背面向)の図。攻撃性や抑うつに関するテーマ。
5 ドアを開け部屋を見る女性の図。干渉などに関するテーマ。
6GF 若い女性と中年男性の図。父親や家族に関するテーマ。
8GF 何かを眺める女性の図。健康度に関するテーマ。
19 雪の積もった家のような絵画的な図。適応力や活力に関するテーマ。
20 街灯と男性の図。将来に関するテーマ。
5.3.5.2 SCT
 文章完成法。刺激文から連想する文章を自由に書くことで、検査対象のパーソナリティの全体像や諸側面の特徴を具体的に把握することを目的とする。所要時間は、30~90分。

 精研式SCTについて解説する。質問紙には、「私の父は」「私はよく」といった書きかけの文章(刺激文)が並んでおり、頭に浮かんできたことを続けて書き(反応文)、文章を完成するように指示される。できるだけ早く1番から順に実施し、思い浮かばない場合は〇をつけて先に進む。回答が終了したら、裏面に慎重、体重、健康状態、体格に関する個人資料を記入する。Part1が30項目、Part2が30項目から構成される。選択する筆記具や筆跡も分析対象である。分析では、スコアではなく反応文そのものを重視し、形式分析と内容分析を用いる。パーソナリティは、「環境」「身体」「能力」「性格」「指向」の側面に着目する。例えば、下表のような着目点を分析する。

分析方法 着目点 分析
形式分析 反応の長さ(文章が長文か短文か) 短文を書く人は、自分のことを話したがらない防衛機能が高い、もしくは早とちりで粗雑な傾向。
反応時間(一つの文章にかかる時間)
文法的な誤り、読みやすさ 知的な問題もあるが、文法的に正しい人は注意深い傾向
筆跡(字の大きさや筆圧) 字が大きい人はおおらか。線や用紙からはみ出す人は自己中心的な傾向。
内容分析 パーソナリティ 【知的側面】反応文が年齢相応、時間的・空間的見通しができているか、自分や環境に対して客観的に書けているか分析
【情意的側面】本人の性格の特性を分析
【指向的側面】本人が好きなものや将来について問う刺激文をピックアップし、検査対象の価値観や目標を分析
【力動的側面】コンプレックスや心的葛藤、不安、攻撃性を分析
決定要因 【身体的要因】容姿や健康、体力の分析。
【家族的要因】家族の雰囲気、人間関係を分析。
【社会的要因】社会での対人関係を分析。
 客観性を担保するため、「ener.(エネルギー)」「diff.(精神的分化度、実際的な頭の良さ)」「type(精神医学的性格類型)」「G(顕耀性)」「H(ヒステリー)」「N(神経質)」「secu(心の安定性)」「意欲」の8つの指標を用いることもできる。
5.3.5.3 バウムテスト
 描いた木から、書き手の、こころの特定の部分ではない自己イメージを推察する描画テスト。侵襲性の低さと参考資料の多さが特徴。所要時間は、5~15分。
 おおむね縦長方向で置かれたA4の白紙の画用紙に、4B鉛筆を用いて、実のなる木を1本描くように指示を受ける。描画後、「樹種」「木の高さ」「樹齢」などの質問を受ける。導入時のやり取りや描画のプロセス、その後のコミュニケーションも分析対象である。検査者によって、複数回実施したり、彩色したり自由に変更されている。分析では、採点の基準は無く、理解の姿勢のみが提示されるので、検査者の目を通じて検査者の責任で解釈する。
5.3.5.4 S-HTP
 統合型HTP。Synthetic House-Tree-Person technique。検査対象の環境へのかかわり方や適応能力などの社会性、不安や抑うつなどの精神病理傾向を捉えることを目的とし、「家」と「木」と「人」を描く描画テスト。所要時間は、15~30分。
 横向きのA4の画用紙とHB鉛筆2~3本が渡され、家と木と人を入れて、他は自由に自分の思うように描くように指示される。絵の上手い下手は気にせず、できるだけ丁寧に描くように説明を受ける。描画後、「絵全体」「人(どんな、何歳くらい)」「家(どんな、中に人はいるか)」「木(どんな、大きさは)」「他に説明として加えたいこと」の質問を受ける。分析では、絵全体の第一印象から「寂しい」「楽しい」「怖い」を判定する。家は家庭との関係を、木は無意識的な自己像を、人は意識的な自己像を表すものと考えられている。各要素を結びつけて1つの世界を構成しようとする試みは、外界や他人への関心を示し、社会性が出る。結びつけられない場合は、エネルギーや社会性が低く、不適応な状態にある。「空間の偏り」「全体の簡略化」「強迫的」「過剰な陰影」「夜・雨の風景」は抑うつ指標として使用される。
5.3.5.5 LMT
 風景構成法。アイテムを描き足しながら描き手の世界を作る描画テストだが、明確な検査目的はない。所要時間は、早いと10分。

 A4の画用紙と、黒のサインペンと、24色程度のクレパスセットが渡される。最初の「構成段階」では、検査者から指示されるものを1つずつ加えながら1つの風景を作り上げる。描くのは、川、山、田、道、家、木、人、花、動物、石の順番で指示される10個のアイテムである。次の「付加」では足りないと思うものを描き加えるように指示される。「彩色段階」では、できたらクレパスで色を塗る。描画後に、定型はないが、風景の全体や部分について質問する。分析では、アイテムが下表のような独自の意味を持っており、配置した位置(上が精神的、下が肉体的、左が内的・母性、右が外的・父性、真ん中が現在、左下が過去、右上が未来)と合わせて意味付けが行われる。大景群(川、山、田、道)は「世界」の骨格を決定し、中景群(家、木、人)は人間中心的な風情を加え、近景群(花、動物、石)は「世界」に落ち着きを与えるとされる。彩色は風景を修正し、情動づける。空間に関しては、風景をダイナミックな描線で描き、多空間的(キメラ的)で細部にこだわり、色は濃くて種類も多い傾向があるP型(妄想型統合失調症タイプ)と、比較的単調な線で整合的な遠景を描き、色は冬枯れや薄さを特徴とするH型(破瓜型統合失調症タイプ)がある。

アイテム 意味 詳細
無意識の感情 流れ、方向、色の強弱に感情の傾向が出る。穏やかな川は、意識と無意識が無理をしていない状態。真ん中に上下の川は、現実と心の中を分けている状態。
性格の特徴 尖った山は父性的。丸みがある山は母性的。
仕事・課題 面積が広いと働き者だが、広すぎると意識下で怠惰。右下にあると家庭の仕事が多い。稲穂があると、結果重視。
意識して作り上げた人生の道 まっすぐの道は安定志向。十字路は決断の時。Y字路は選択の時。真っ黒の道は情緒不安定。行き場のない道は、絶望的な怒り。
自分自身を投影 派手な家は、自己顕示欲が強い。貧相な家は、自信が無い。
才能・能力 緑がいっぱいだと、才能が豊富、力強い。枯れた木が多いと、いっぱいいっぱいで弱々しい。
人間関係 1人だと、自身に目を向けるべき状態で、うつ病や自殺のサイン。2人だと、周りの人間関係に対立し葛藤している。3人だと、調和が大事だと思っている。4人だと、人間関係に疲れている。記号人間だと、ひどく人間に疲れている。
優しさ・愛・結婚 左下にあると、愛情が満たされているか不足。
動物 集合的無意識 自分より大きい動物だと、男性的側面(行動的・積極的・攻撃性)。自分より小さい動物だと、女性的側面(情緒的・優しい・人に沿う)。
障害・頑張りの強さ 右上にあると、将来に不安。
足りないもの 自分のシンボル 太陽は、生命のエネルギーや健康の象徴。橋は、成功のチャンス。雲は、自由への願望。車は、気分転換や逃げ出したい欲求

5.3.6 神経心理学検査

 高次脳機能障害を判断するための検査である。認知症の検査としてCDR、MMSE、HDS-R、ADASがある。認知機能全般の検査として、COGNISTATがある。記憶・再生の検査として、ウェクスラー記憶検査、ベントン視覚記銘検査、三宅式記銘力検査、リバーミード行動記憶検査がある。
5.3.6.1 CDR
 臨床認知症評価尺度。認知機能のスコアに基づく評価ではなく、日常生活の状態から評価することを特徴とする。

 本人への問診や、家族を中心とした身近な人からの情報を基に評価する。下位項目は、「記憶」、「見当識」、「判断力と問題解決」、「地域社会活動」、「家庭生活および趣味・関心」、「介護状況」の6項目があり、各項目について、障害なし(0)、認知症の疑い(0.5)、軽度認知症(1)、中等度認知症(2)、重度認知症(3)で判定し、それらを総合して重症度を判定する。CDRが0.5~1なら軽度認知障害、CDRが1以上なら認知症として捉えることが多い。評価基準は下表の通り。

CDR 0 0.5 1 2 3
記憶 記憶障害なし
軽度の一貫しない物忘れ
一貫した軽い物忘れ
出来事を部分的に思い出す良性健忘
中程度記憶障害
特に最近の出来事に対するもの
日常生活に支障
重度記憶障害
高度に学習したもののみ保持、新しいものはすぐに忘れる
重度記憶障害
断片的記憶のみ残存する程度
見当識 見当識障害なし 時間的関連の軽度の困難さ以外は障害なし 時間的関連の障害中程度あり、検査では場所の見当識良好、他の場所で時に地誌的失見当 時間的関連の障害重度、通常時間の失見当、しばしば場所の失見当 人物への見当識のみ
判断力と問題解決 日常の問題を解決
仕事をこなす
金銭管理良好
過去の行動と関連した良好な判断
問題解決、類似性差異の指摘における軽度障害 問題解決、類似性差異の指摘における中程度障害 問題解決、類似性差異の指摘における重度障害 問題解決不能
社会的判断は通常、保持される 社会的判断は通常、障害される 判断不能
地域社会活動 通常の仕事、買物、ボランティア、社会的グループで通常の自立した機能 左記の活動の軽度の障害 左記の活動のいくつかに関わっていても、自律できない
一見正常
家庭外では自立不可能
家族のいる家の外に連れ出しても他人の目には一見活動可能に見える 家族のいる家の外に連れ出した場合生活不可能
家庭生活および趣味・関心 家での生活、趣味、知的関心が十分保持されている 家での生活、趣味、知的関心が軽度障害されている 軽度しかし確実な家庭生活の障害
複雑な家事の障害、複雑な趣味や関心の喪失
単純な家事手伝いのみ可能
限定された関心
家庭内における意味のある生活活動困難
介護状況 セルフケア完全 奨励が必要 着衣、衛生管理など身の回りのことに介助が必要 日常生活に十分な介助を要する頻回な失禁
5.3.6.2 MMSE
 精神状態短時間検査。認知機能障害や認知症のスクリーニングに使用される。軽度認知障害と健常者の鑑別は困難とされる。所要時間は、10~15分。
 記録用紙を使用し、「時の見当識(年、季節、月、日、曜日を答え、配点5点)」「場所の見当識(国、町、階など5問に答え、配点5点)」「記銘(3つの関連の無いものを記憶し、配点3点)」「注意と計算(配点5点)」「再生(記銘で記憶した3品を答え、配点3点)」「呼称(腕時計や鉛筆が何か答え、配点2点)」「復唱(文章を繰り返し、配点1点)」「理解(右手に紙を持ち、半分に折り、机の上に置く、三段階命令を理解できれば、配点3点)」「読字(紙に書かれた文章を読み、配点1点)」「書字(紙に文章を書き、配点1点)」「描画(2つの五角形が交わった形状を複写し、配点1点)」の11の設問を順番に実施する。「注意と計算」では100から7の減算を繰り返し行い、「記銘」で記憶したことが「再生」できるか確認する。「描画」は、辺の数など定められた基準に従って正誤の判定を行う。分析では、得点や5つの認知領域バランス、下位項目の正誤の質的検討や行動観察、検査対象の生活歴、画像所見などから総合的に判断する。30点満点のうちカットオフポイントは24/23点であり、23点以下は認知症の疑いがあり、10点未満は重度認知障害と評価される。「再生」と「描画」に失敗した場合は、得点が高くても認知症の可能性がある。「見当識」は、言語障害の影響を受けやすい。「呼称」は失語、動作性課題の「理解」は失行、「誤字」は失読、「書字」は失書、「描画」は失認などを推測できる。
 5つの認知領域は、見当識(時の見当識、場所の見当識)、記銘(記銘、再生)、注意と計算(減算)、言語(呼称、復唱、理解、読字、書字)、視覚構成(描画)からなる。
5.3.5.3 HDS-R
 長谷川式認知症スケール。認知症のスクリーニングで使用される。所要時間は、5~10分。
 記録用紙を使用し、「年齢(配点1点)」「時間の見当識(年、月、日、曜日に答え、配点4点)」「場所の見当識(今いる場所を答え、配点2点)」「単語の記銘(3つの関連の無いものを記憶し、配点3点)」「計算(配点2点)」「数字の逆唱(配点2点)」「記憶の再生(配点6点)」「物品呼称(見せた後に隠した時計やペンの名称を答え、配点5点)」「単語想起(野菜の名前を最大10個答え、配点5点)」の9の設問を、「単語の記銘」「計算」「数字の逆唱」「記憶の再生」のみ順番になるように、順不同でも良いので実施する。「計算」では100から7の減算を繰り返し行い、「数字の逆唱」では口頭で伝えられた3桁と4桁の数字を逆順に読み上げ、「単語の記銘」で記憶したことが「記憶の再生」できるか確認する。「年齢」は2歳の誤差は正答になる。「場所の見当識」と「記憶の再生」はヒントによる正答は1点になる。「単語想起」は10秒で打ち切りとする。分析では、30点満点のうちカットオフポイントは21/20点であり、20点以下を認知症と評価する。下位項目の分析では、「数字の逆唱」は注意力と作業記憶課題、「単語想起」は言葉の流暢性課題、というような設問の観点から解釈する。
5.3.6.4 ADAS
 認知機能下位尺度。認知機能の変化を評価するため、継続的に実施し得点変化を見る。所要時間は、40分。
 カードや紙、物品、手紙などを使用し、次の11個の課題を実施する。「単語再生(カードに記載されている10単語を呼称させ、即時再生を3試行する)」「口頭言語能力」「言語の聴覚的理解」「自発話における喚語困難(5~10分間の自由形式の会話)」「口頭命令に従う(5課題を口頭で指示し遂行できるか評価)」「手指および物品呼称(手指名および12物品の呼称をさせ評価する)」「構成行為(4課題の図形模写)」「観念行為(手紙をポストに投函するまでの一連の遂行機能を評価)」「見当識(時間、場所、人に関する見当識を評価)」「単語再認(カードに記載された12単語を呼称させた後、ダミーを含む24単語に対して見た単語か再認させ、同課題を3試行する)」「テスト教示の再生能力(単語再認課題の教示内容を覚えているか評価)」。分析では、下位尺度の失点を計算し、合計の最高点は70点(高いほど悪い)となる。各下位尺度について、0点は障害が無い、1点は障害が軽度に認められる、2点は軽度、3点は中等度、4点はやや高度、5点は最も高度な障害がある。
5.3.6.5 COGNISTAT
 Neurobehavioral Cognitive Status Examination。全般的認知機能を評価することを目的とする。所要時間は5~20分。
 検査者が読み上げる質問に対して、カード、筆記用具、鍵、硬貨などを使用して回答する。最も難易度の高いスクリーン検査に成功すればその下位項目は正常とされ、失敗した場合のみ難易度の低いメトリック検査が実施される。分析では、下位検査の得点を折れ線グラフのプロフィールで表し、認知機能障害の有無、障害されている認知機能、重症度、生活障害への影響、ケアやアドバイスなどについて解釈する。下位検査は評価点9点以上で障害なし、8点で軽度、7点で中等度、6点以下で重度、と重症度を評価できる。障害域の成績を示した下位検査の数は2/3がカットオフポイント。標準得点の合計点は89/90がカットオフポイントで、89点以下を認知症と判定する。
 評価できるのは、3領域の一般因子(覚醒水準、見当識、注意)と、5領域の認知機能(言語、構成能力、記憶、計算、推理)。
5.3.6.6 WMS-R
 ウェクスラー記憶検査。言語性記憶、視覚性記憶、一般的記憶、注意・集中力、遅延再生の各記憶機能などを測定することを目的とする。所要時間は、45~60分。
 記録用紙やカードを使用し、次の13個の課題を順番に実施する。「情報と見当識」「精神統制(注意・集中力)」「図形の記憶(視覚性記憶)」「論理的記憶Ⅰ(言語性記憶)」「視覚性対連合Ⅰ(視覚性記憶)」「言語性対連合Ⅰ(言語性記憶)」「視覚性再生Ⅰ(視覚性記憶)」「数唱(注意・集中力)」「視覚性記憶範囲(注意・集中力)」「論理的記憶Ⅱ(遅延再生)」「視覚性対連合Ⅱ(遅延再生)」「言語性対連合Ⅱ(遅延再生)」「視覚性再生Ⅱ(遅延再生)」。Ⅱの課題はⅠの課題から30分後に実施する。「視覚性対連合Ⅰ」と「言語性対連合Ⅰ」は、誤っても6回まで正答が伝えられる。分析では、「情報と見当識」の下位検査は指標に換算しないものの、低得点の場合は解釈に留意すべきとされる。他の下位検査の粗点を計算し、「言語性記憶」「視覚性記憶」「一般的記憶」「注意・集中力」「遅延再生」の領域ごとに合計点を算出する。各領域ごとに、偏差指標が130以上で最優秀域、120~129で優秀域、110~119で普通域上位、90~109で普通域、80~89で普通域下位、70~79で境界域、50~69で軽度記憶障害域、50未満で中等度から重度記憶障害域と判定される。
5.3.6.7 BVRT
 ベントン視覚記銘検査。視空間認知、視覚記銘力、視覚認知再構成などの側面から、後天的な脳器質性障害をアセスメントすることを目的とする。所要時間は、5~10分。
 1~3個の図が描かれた10枚の図版カードを使用する(図の異なるものが3セットある)。施行Aでは、各図版が10秒間提示された後、即時描画させられる。施行Bでは、各図版が5秒間提示された後、即時描画させられる。施行Cでは模写させられる。施行Dでは、各図版が10秒間提示された後、15秒後に描画させられる。10枚の図版カードのうち、最初の2枚は図が1個で、次の1枚は図が2~3個、残りの7枚は図が3個描かれている。図の配置から、半側空間無視や視野障害も検出できる。分析では、正確数(カード中のすべての図を正しく描画したら1点)と誤謬数(左側図形と右側図形のそれぞれについて、省略、歪み、保続、回転、置き違い、大きさの誤りの6種類を数える)を算出する。後頭葉損傷者では記銘と図形模写の検査で特に低成績を示し、右頭頂葉損傷者では図形間の空間関係の把握に失敗する傾向がある。前頭葉損傷者では保続が見られることが多い。20~45歳の平均的な日本人の成績は、正確数8~9、誤謬数は1~3程度とされる。
5.3.6.8 三宅式記銘力検査
 聴覚言語性記銘力や対連合学習機能を測定することを目的とした検査。所要時間は、15分。
 検査者が「ビール – コップ」などの有関係の対語を10個読み上げた後、「ビール」と片方だけを言うので、検査対象は対になる「コップ」を回答する。10秒以内に回答できなければ忘却とみなされ、次の単語を回答する。3回施行した後、無関係の対語も3回施行する。分析では、有関係対語と無関係対語ごとに正答数、誤答数、忘却数を算出する。通常、施行を進めるにつれて点数は上がる傾向にあるが、認知症高齢者では有関係対語の成績が悪く、無関係対語での学習効果が認められないことが多い。コルサコフ症候群では、有関係対語に比べて無関係対語の成績が悪い。

 有関係対語のリストの例は下表の通り。

(1) (2) (3) (4) (5)
人 – 猿 えびす – 大黒 運動 – 体操 海 – 船 花 – 蝶々
田舎 – 田園 煙草 – マッチ 金 – 銀 男 – 髭 家 – 庭
親切 – 情 相撲 – 行司 命 – 服従 春 – 秋 役者 – 舞台
医者 – 病人 空 – 星 眠り – 夢 机 – 硯 立身 – 出世
手 – 足 汽車 – 電車 火事 – ポンプ 鳥 – 飛行機 夕立 – 雷
池 – 河 氷 – 雪 心配 – 苦労 雨 – 傘 旅行 – 名所
軍人 – 戦争 寿司 – 弁当 木綿 – 着物 夜 – 電灯 勲章 – 功労
馬車 – 自動車 葬式 – 墓 温泉 – 海水浴 病気 – 薬 女中 – 台所
勉強 – 試験 夕刊 – 号外 茶碗 – 箸 竹 – 虎 幸福 – 満足
狐 – 稲荷 華族 – 平民 カルタ – トランプ 梅 – 桜 鳩 – 豆

 無関係対語のリストの例は下表の通り。

(1) (2) (3) (4) (5)
谷 – 鏡 地球 – 問題 将軍 – 水道 火鉢 – 嵐 蛍 – 軍艦
酒 – 村 少年 – 銀行 柱 – 切符 夏 – 徳利 雨戸 – 西瓜
下駄 – 坊主 入浴 – 鯨 鉄橋 – 公園 心 – 池 練習 – 地震
忠義 – 椅子 つぼみ – 響き 成功 – 月 煙 – 弟 材木 – 老人
仕事 – 冬 うさぎ – 障子 新年 – 先生 犬 – ランプ 縁日 – 病院
娘 – 石炭 田植え – 神社 猫 – 鉛筆 正直 – 畳 玄関 – 砂糖
蛙 – 巡査 ガラス – 貧乏 屋根 – 菓子 学校 – 太陽 診察 – 牛
柳 – 電話 水泳 – 紫 財産 – 都会 松 – 人形 電気 – 藤
行列 – 空気 停車場 – 真綿 商売 – 警察 頭 – 秋 時間 – 鉄瓶
書生 – 袋 特別 – 衝突 けんか – 香水 時計 – 嵐 洋行 – 手拭い
5.3.6.9 RBMT
 リバーミード行動記憶検査。日常記憶の障害を測定または予測することを目的とした検査。所要時間は、30分。

 記録用紙、顔写真、タイマー、カード、封筒、ICレコーダ等の用具を使用し、次の順番で検査を実施する。これらは、11個の下位検査項目(姓の記憶、名の記憶、持ち物の記憶、約束の記憶、絵の遅延再認、物語の直後および遅延再生、顔写真の遅延再認、道順の直後および遅延再生、用件の直後および遅延再生、日付を除く見当識、日付の見当識)に対応している。

  1. 大判顔写真が提示され、その姓名を覚える。
  2. 検査対象の持ち物が1つ隠され、検査終了と言われたら持ち物を返して欲しいと言うように指示される。
  3. 20分が設定されたタイマーが鳴ったら、次回の予約を訪ねるように指示される。
  4. 絵カード10枚が提示され、呼称させられる。
  5. 読み上げられた物語を、直後に復唱する。
  6. ダミーを加えた20枚の絵カードから、4で提示された10枚の絵を見つける。
  7. 未知の顔写真5枚が提示され、覚えやすくするために写真ごとに性別と40歳以上か否か質問される。
  8. 決められた5ヵ所以上を通る道順と、連絡の封筒を指示された場所に置く要件を覚えるように指示され、直後に実施する。
  9. ダミーを加えた10枚の顔写真から、7で提示された5枚の顔写真を見つける。
  10. 見当識と日付の質問を受ける。
  11. タイマーが鳴るので、3の約束を思い出す。
  12. 5の物語を復唱する。
  13. 8の道順と要件を答える。
  14. 1の大判顔写真が提示されるので、姓名を答える。
  15. 検査終了が伝えられるので、2の約束を思い出す。
 分析では、下位検査項目ごとに反応の良否の基準に従い3段階で換算される標準プロフィール点(SPS、24点満点)と、独力による正答の可否を見る基準で換算されるスクリーニング点(SS、12点満点)を算出する。SPSのカットオフポイントは、39歳以下で19/20点、40~59歳で16/17点、60歳以上で15/16点であり、SSのカットオフポイントは、59歳以下で7/8点、60歳以上で5/6点。