5 殺人と法律
5.1 殺人に関する刑罰
-
刑法第39条「心神喪失者の行為は、罰しない」
-
刑法第41条「14歳に満たない者の行為は、罰しない」
-
刑法第199条「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する」
-
業務上過失致死傷刑法第211条前段「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。」
-
重過失致死傷刑法第211条後段「重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。」過失犯のうち、わずかな注意を払うことにより事件を容易に回避できたのに、それを怠って発生させた場合には業務上過失致死傷と同様の罪責である、重過失致死傷が成立する。赤信号を見過ごして交差点に進入した場合や、進路前方を注視せずに佇立していた人に気づかなかった場合、安全確認不十分のまま対向車線に進出した場合などがある。
新生児の遺棄では、出産時に生きていれば殺人罪、堕胎罪、遺棄致死罪であり、出産時に死んでいれば、遺棄罪が適用される。
5.1.1 永山基準
殺人に関する刑罰で外せないのは、死刑の判断基準である永山基準である。1983年、連続射殺事件の被告だった永山則夫の裁判で、最高裁が2審の無期懲役判決を棄却した際に示され、この基準が以降の死刑判決の適用に広く影響を与えている。
基準の内容は以下の9項目である。これらを考慮し、刑事責任が極めて重大で、犯罪予防などの観点からやむを得ない場合には、つまり極刑以外に選択の余地が無いなら死刑の選択も許されるとした。
- 犯罪の性質
- 動機、計画性など
- 犯行態様(執拗さ、残虐性など)
- 結果の重大さ(特に、殺害された被害者の数)
- 遺族の被害感情
- 社会的影響
- 犯人の年齢(犯行時に未成年など)
- 前科
- 犯行後の情状